米国のバイデン政権が、核戦力の新たな戦略策定を進めている。ロシア、中国が核を増強するなか、米国は核攻撃を受けない限り、核兵器を使わないとする「先制不使用」を宣言できるのか。核政策に詳しいカーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副理事長に聞いた。
核兵器の「使用目的の唯一化」とは
――バイデン政権に対して、核兵器の先制不使用の宣言に踏み切るべきではないと提言していますね。
「米国が先制不使用を宣言すれば、中ロが核の先制使用をしなくなる、という考え方があるが、実際は中ロは米国の言葉を信じないだろう。米国も、中国による先制不使用の宣言を信頼していない。米国が核兵器をさらに削減すれば、中ロの信頼を得られるかもしれない。核の配備状況を変えずに、言葉だけを変えても信頼は得られない」
「一方、米国の同盟国、たと…
【視点】 パーコビッチ氏の主張は、米国は中ロを信頼しないし、中ロは米国を信用しないという原則に基づいて構築されています。核軍縮を実現するためには、こういう相互不信の論理を克服することが求められています。かつて米国とソ連の間で核軍縮が一定の成果を上げ