出生前検査で「陽性」 沈黙していた夫、実は最後まで一緒に悩んだ

有料会員記事

浜之上はるか
[PR]

 「では、結果をお知らせしますね。こちらですが、T21陽性と返ってきています」

 結果報告書の赤字を指さしてそっと告げました。

 若干の沈黙。しかし、落ち着いて見えました。

NIPT「陽性」の結果をどう受け止める?

 その2週間前のことです。ご夫婦は熱心に話を聞いておられました。妊娠15週、第3子の妊娠。共働きで、もうすぐ幼稚園入園を控えた男の子と3人暮らしです。

 第2子は、今はいません。おなかにいるころ、気になるエコー所見を指摘され、羊水検査で18トリソミー(18番目の染色体が3本ある)の男の子だと教えてもらっていました。出産直前に死産しています。

 とてもつらい経験でした。「今回は、もっと早くからきちんと検査しておければと思っています」とはっきりおっしゃっていました。

 「結果によってどうしようとかありますか?」とお聞きすると、「うーん……。分からないですけどね、でも早くから知っていたほうが、後悔しないと思うんです」とお答えになりました。

 第1子のご様子や、第2子での経験についても無理のない範囲で語ってもらいながら話を進めました。仕事柄、病気の子どもと接する機会は多いらしく、こちらの説明に対して大きくうなずきながら聞いていらっしゃいました。

 結果をお伝えした場面に戻ります。

 検査が示している内容についてゆっくり解説をしました。

 「おなかの子がダウン症候群(トリソミー21)のある子である可能性が高いと出ています。はっきりさせる必要がある場合には、羊水検査が必要になります。ダウン症候群については、一般的なお話は検査の前にもお話していますが、もしそうだとはっきりしても、おなかの子がどのような症状を示すのか、症状の重さはどの程度なのか、などはそれぞれの段階でお話できるようになると思いますが、まだしばらく分からないです」

 妊婦さんご本人が、口を開きました。「そうですよね。ダウン症でも個人差が大きいことはよく知っています。今後のこと、まだ決められないけど……。とりあえず羊水検査は受けたいです」

 一方で、ご主人は、ほとんど話されません。報告書を注視してほとんど動かずにいらっしゃいます。奥様のご発言にかろうじてうなずいていらっしゃいました。

 「この先どのようにしていくのか、どんな判断をすることになるのか、その決定のプロセス一つ一つに関わらせてもらおうと思っています」と付け加えました。

意外な質問、その理由は?

 ご本人から、「これからよく考えようと思うんですけど、もし羊水検査希望しなくなったらやめても大丈夫ですか?」。

 真意を確かめたくて、尋ねました。

 「羊水検査、要らないかなっ…

この記事は有料会員記事です。残り3222文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
浜之上はるか
浜之上はるか(はまのうえ・はるか)横浜市立大学附属病院遺伝子診療科講師
2000年東海大医学部卒。横浜労災病院産婦人科、横浜市立大学附属病院遺伝子診療部助教などを経て、18年から現職。産婦人科専門医・指導医、臨床遺伝専門医・指導責任医。日本遺伝カウンセリング学会の評議員・倫理問題検討委員を務める。