送れなかった手紙 防げたはずの悲劇 定年控えた警察補導員の後悔
26年前。
少年鑑別所にいる少女から1通の手紙が届いた。幼いころの思い出がつづられていた。
「帰ってきても、お母さんがいないから、お母さんの、大きな、とびらのついた、洋服だんすに入って、お母さんの、においかぎながら泣いた事もありました。いろいろな事が思い出されます」
北海道警の少年警察補導員、榊(さかき)和恵(60)は、非行に走った少女の心に触れたような気がした。
警察補導員は子どもたちを補導し、家庭裁判所などに通告する。目的は子どもの更生を促すためだ。
榊は自分が関わった子どもが鑑別所に入れられると、なるべく手紙を書いた。
そんな子どもたちは、心のどこかで感じていることを言葉にして表現する機会が乏しい。抱える問題に向き合うことがうまくできない。だから惰性で悪さをしてしまう。
「変わりたい」「現状から抜け出したい」。ほんとうはそう言いたい。
文通をすることで、子どもたちが変わるきっかけになるのではないか。あなたの将来を案ずる大人が、1人はいるのだ、と知ってほしかった。
忘れられない少年がいる。十…