ブラジル人定住へ、官民が就職支援

清水優志
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 日系ブラジル人が多く暮らす島根県出雲市で、外国人の就職を支援する動きが官民で進んでいる。景気などに左右されやすい工場での仕事だけでなく、働き口を広げることは地域にとっても大きな課題。定住に向けた経済的な自立に加え、地域活性化にもつながる取り組みとして注目される。

 10月下旬、同市大社町の農園では、収穫期を迎えた「キャッサバ」というイモを、3人のブラジル人が次々に地面から引き抜いていった。キャッサバはタピオカの原料として知られるが、ブラジルでは主食として欠かせない食材だ。

 この農園は、ブラジル人の働き口を増やそうと、かつてブドウ畑だった耕作放棄地を活用して昨春開設された。現在では市内の工場などで働くブラジル人ら12人が、約3ヘクタールの畑でキャッサバ約2千本のほか、ビーツやジャガイモなどを育てている。

 出雲市では、市内の電子部品製造会社による積極的な雇用を背景に、近年定住資格を持つ日系ブラジル人が急増。9月末現在で、3612人のブラジル人が暮らす。だが、米中貿易摩擦が深刻化した2019年ごろ、この会社の工場が実施した生産調整で労働時間と賃金が減少。よりよい仕事を求め、市外に転出する例が相次いだ。

 農園を運営する「イズモ・アグロブラジル」代表の滝浪実(たきなみみのる)セルジオさん(67)は「経済状況に左右されず、働き続けられる場所をつくりたい」と狙いを明かす。今回収穫されたキャッサバは市内の学校給食でも使用される予定だ。「地域の人たちと協力しながら新しい食材をつくり、出雲を元気にしていきたい」と話す。

 出雲市の県立東部高等技術校には今年9月、「定住外国人向け就職サポート科」が新設された。市内に住む日系ブラジル人8人が入校し、来年1月まで日本語やパソコンでの文書作成、ビジネスマナーなどの習得を目指す。

 来日17年目のオリタ・フェリペ・ゴンサレスさん(43)は「日本語とパソコンを学び、カメラマンとして働きたい」と抱負を語った。山崎雅則校長は「日本での就職の選択肢を広げるためには、日本語でのパソコン操作などのスキルアップが不可欠だ。職業訓練を通じ、定住につなげていきたい」と話す。(清水優志)