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ママはゴールに来なかった 「女性だから」使われなかったAED

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後藤一也
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 柘植(つげ)彩さん(47)が、知彦さん(54)と出会ったのは20年ほど前。米国にいる友人を訪ねたとき、分子生物学の研究者として留学中だった知彦さんと話す機会があった。

 「芯のあるおもしろい人だ」。知彦さんは彩さんにひかれた。

 2人は2003年に結婚した。

 その翌年に京都府内に引っ越してからは、毎年12月に夫婦で約10キロの地域のマラソンに参加するようになった。

 2人とも体を動かすのが好きで、ハーフマラソンにも何回か出場したことがあった。

 決まっていつも知彦さんが最後尾で、そのちょっと前を彩さんが走る。

 彩さんは東日本大震災の後に、福島の子を招いてリフレッシュキャンプを開くなど、地元の活動に精力的だった。

 幼児教育に関わりたいと、保育士や臨床発達心理士の資格も取った。

 13年からは、障害がある子の生活をサポートする療育支援の場で働き始めた。

 その年の12月も、もちろん夫婦でマラソンに参加する予定だった。

 だが知彦さんが熱を出し、彩さんだけが参加することになった。

 「いってくるね」

 「いってらっしゃい、がんばって」

 当時4歳だった一人娘の奏恵さん(12)は、祖父とゴール前で彩さんを待っていた。

 だが、「ママはいつまでも来なかった」。

 彩さんはゴール1キロ手前で、倒れていた。

 救急隊が到着するまでの6分…

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