「中国と国交結ぶ」野党候補が優勢 ホンジュラス大統領選開票始まる
中米ホンジュラスの大統領選が28日投開票され、セラヤ元大統領の妻で野党リブレのシオマラ・カストロ氏(62)が優勢となっている。同国は台湾と国交を結んでいるが、カストロ氏は「当選したら中国と国交を結ぶ」と発言し、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権が危機感を強めていた。ただ、実際に断交するかは未知数だ。
選管発表によると、開票率50%の時点で、カストロ氏が53%を得票している。与党国民党で、首都テグシガルパ市長のナスリ・アスフラ氏(63)は34%で2位だが、20ポイント近い差がある。
「長年にわたる権力の乱用はもう終わりだ。貧困も汚職もないホンジュラスにする」。カストロ氏は28日夜、テグシガルパの選挙事務所で演説し、勝利宣言を行った。アスフラ氏は敗北を認めていないが、勝利が確定すればカストロ氏は同国初の女性大統領となる。演説では台湾との国交見直しには触れなかった。
選挙の主な争点は汚職、失業、治安問題だった。現職のエルナンデス大統領が麻薬組織との関係が疑われていて、アスフラ氏も汚職疑惑があり、カストロ氏は選挙戦で批判してきた。10月には別の野党政治家が大統領選への立候補を断念してカストロ氏支持を打ち出し、優位に立った。
これに危機感をあらわにしたのが台湾の蔡政権だった。カストロ氏が、台湾と断交して中国と国交を結ぶと発言していたためだ。
ただ、カストロ氏が実際に台湾と断交に踏み切るかはわからない。ホンジュラスは政治・経済面で米国との関係が深く、連携する野党や経済界にも慎重論がある。カストロ氏の選挙参謀は投票日前に、台湾との国交見直しについて「最終的に決まっていない」とロイター通信の取材に答えていた。
カストロ氏が台湾との関係見直しについて発言した背景には、中米での米国の影響力の低下と中国の台頭がある。
ホンジュラスなど中米諸国は「裏庭」と呼ばれるほど、米国の影響を強く受けてきた。だが、カストロ氏の夫のセラヤ元大統領が2009年にクーデターで政権を追われた際、当時のオバマ米政権は積極的な対応は取らず、結果的にセラヤ氏は亡命を余儀なくされた。続くトランプ米政権では、移民問題を理由に、ホンジュラスへの支援を減額すると脅すなどした。
一方、中国はこの間、中米諸国への投資や支援を通じ、影響力を拡大。エルサルバドル、パナマ、ドミニカ共和国は台湾と断交し、中国と国交を樹立した。(テグシガルパ=岡田玄)