アフリカに甲子園を 松井秀喜さんが応援する理由 5敬遠と人間性

編集委員・安藤嘉浩
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 アフリカに甲子園大会をつくり、日本の高校野球と同じスタイルで青少年を育てようというプロジェクトが本格的にスタートする。松井秀喜さん(47)に支援をお願いしたのは、「目指すべき人物像そのものだから」という。

 「アフリカ野球・ソフト振興機構(J―ABS)」の友成晋也代表理事(57)が、ニューヨークにいる松井さんとオンラインで面会したのは5月30日。アフリカに野球の種がまかれ、育ってきた様子を説明し、赤土のグラウンドで野球に興じる動画も見てもらった。

 「素晴らしいですね。大変、感銘を受けました」

 松井さんは言った。アフリカについても「ぼくは動物が好きなこともあり、小さいころに映像を見て、行ってみたいと思っていた」と関心を示した。

 なによりも、日本型の野球を通じた人材育成をしようという構想に、松井さんは共感した。一方で「なぜ私なんですか。もっとふさわしい人がいるのではないですか」と尋ねた。

 「甲子園で5打席連続敬遠されてもスポーツマンシップを発揮された。野球を通じた人づくりで目指す人間像そのものだからです」と友成氏は説明した。

 新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、友成氏は8月下旬に渡米し、松井さんと今度は直接会談した。改めて共感してもらうことができ、「できる限りの協力をしましょう」と話してくれたという。

 エグゼクティブ・ドリームパートナーとして松井さんの最初の仕事は、12月に開催されるタンザニア甲子園で披露される参加選手へのメッセージになる。その後はオンラインによる野球指導などを実施し、状況が許せば、現地における青少年少女野球教室も開催する。

 野球を通じた人づくり教本の製作にも協力するほか、支援の輪を広げるためのチャリティーイベントにも参加する予定だ。

 友成氏は「アフリカの国・地域は現在55。松井さんを象徴する数字であり、運命的であると感じている。松井さんとともに、アフリカの青少年育成と発展に寄与し、日本との架け橋になれるよう頑張っていきたい」と話している。

 J―ABSによると、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)に加盟しているアフリカの国・地域は約20カ国。独立行政法人国際協力機構(JICA)職員としてガーナに赴任した友成氏をはじめ、日本人が普及に尽力した国も多い。

 2003年には「アフリカ野球友の会」が設立され、20年まで8カ国で普及活動をしてきた。ガーナとタンザニアには甲子園大会ができ、両国合わせて延べ約3600人が野球を経験した。「友の会」では①規律②尊重③正義をスローガンに掲げて野球を指導してきた。日本人に野球を教わった生徒は「時間を守るようになった」「あいさつができるようになった」「成績が上がった」と教育現場で歓迎されているという。

 14年に始まった「タンザニア甲子園」は14~17歳が通う学校が参加する大会で、16年から女子ソフトボールも始まった。18年には日本の支援で「ダルエスサラーム甲子園球場」が完成。第1回は4だった参加チームは野球13、ソフト5に増えた。第9回大会は12月12~15日に開催される。

 野球を経験し、現在は指導者として野球に携わる若者もいる。彼らに技術指導方法と人づくりの大切さを教える教本を製作したいという。経済的な事情で国際大会に参加できない国も多いため、その支援も必要だ。

 大学の野球部などと連携し、学生を指導員として短期派遣する構想もある。友成氏は「学生にとっても貴重な経験になるはず。日本とアフリカの交流を進めていきたい」と語る。

 記者会見にはアフリカ4カ国の駐日大使が出席。ガーナのフランク・オチェレ大使は「野球を通じて子どもたちに規律、尊重、正義を浸透させるプロジェクトがアフリカ全体に拡大していることに興奮している」、タンザニアのジョン・フィッシャー・カンボーナ臨時代理大使は「松井氏の輝かしい経験が、目標達成に大きな支援となることを確信している」と語った。(編集委員・安藤嘉浩