「現場の声を聞け」権力欲だらけの韓国政治、血の涙流す庶民の叫び声

有料会員記事韓国大統領選挙2022

ソウル=神谷毅
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 ソウル中心部・鐘路(チョンノ)の商店街「セウン商街」は1980年代までの高度経済成長期に電子製品の卸・小売りをする店が集まってできました。日本でも人気だったネットフリックス韓国ドラマ「ヴィンチェンツォ」の舞台にもなったこの商店街には、定食屋を営み、商工団体の幹部を務めた経歴を持つ李根在(リクンジェ)さん(56)の店があります。

 ここで働く人たちの昼ごはんや晩酌の場となっているのが李さんのお店「王蜂」。韓国語で『白飯(ペクパン)』という業種で、日本でいえば定食屋。7千ウォン(約670円)のキムチチゲを注文すれば、おかずの小皿が無料でいっぱい出てきます。

 初めて会った李さんですが、「タメ口」に近い威勢の良い言葉遣いが印象的。江戸っ子ならぬ「ソウルっ子」です。

 韓国だけでなく日本や世界各地で、新型コロナウイルス対策のために外食が制限され、自営業の小さな飲食店は大きな打撃を受けました。李さんと現地を歩き、新型コロナと政治について考えました。

 ――大通りから一つ入った場所ですが、狭い路地が碁盤の目のようにつながっていますね。商店街の中心にあるビルはドラマ「ヴィンチェンツォ」で登場していました。李さんの店名の由来も教えてください。

 「働き蜂」が集まる場所だからな。客が王様に引き寄せられるように、たくさん来るようにって意味だ。広さは50平方メートルしかないけど。朝鮮時代、大通りに食堂があると、貴族が通るたびに礼儀正しくあいさつしないといけなかった。だから食堂なんかは奥の路地にできた。その名残だ。

 ヴィンチェンツォ? ドラマでは「クムガンプラザ」という名前で、ここの商店街の中心となっているビルが登場していたな。

 ――イタリアのマフィアの顧問弁護士を務める韓国系イタリア人が韓国にやってきて、プラザの地下に眠る金塊をめぐり大手企業とやり合う。「悪と悪」の戦いのドラマでしたね。

 ドラマのロケ地というとなんか華やかな感じがするが、うちのような昔ながらの飲食店まで恩恵は及んでこないなあ。

 そもそもアナログ時代の電子製品を今も売っている商店街だから地盤沈下が激しい。かつては一つの店に店員が何人もいたから、大勢がうちの店に来てくれたし、出前も大忙しだった。夜はサムギョプサル(豚ばら焼き肉)と焼酎を出し、まるで不夜城だったよ。でも、今じゃあ商店街の多くの店は社長1人で切り盛りしてる。うちの売り上げも落ちるわけだ。ただ、それでも新型コロナ前は、なんとか黒字を保ってきた。

 そこに新型コロナときた。11月までの数カ月は、夕食の時間帯は3人以上の会食が禁止された。集まって酒も飲めなくなり、経営にはまさに直撃弾だった。今は少し制限が緩和されたが、それでも感染者は多いから、いつまた厳しくなるか……。

 毎月、毎月、赤字。知らず知らずのうちに、体の細胞が一つひとつ死滅していくような感じだ。もう9千万ウォン(約860万円)も借金をした。一度店をやめたら客が離れて再開できなくなる。収入もゼロになる。だから続けるしかない。

 最近は、物価の高騰もある。泣きっ面に蜂だ。米20キロは秋口まで6万ウォン(約5700円)と、1年前に比べて1割前後も上がった。卵の値上がりは4割もだ。3人の店員の人件費も、それに家賃もある。コロナ禍の影響で、このあたりの飲食店は赤字経営が当たり前。俺なんか氷山の一角だ。

 大きなビアホールを経営する知人の借金は、4億ウォン(約3850万円)にもなった。うちは出前は俺がするし、90歳を超えた母が手伝ってくれる。健康でいてくれる母には感謝の言葉しかない。

     ◇

 韓国では11月から防疫が緩和されましたが、同中旬ごろには感染者が過去最多を更新し、3千人超を記録する日も続きました。政府が言う「防疫の強化」には飲食店などに我慢を強いる方法しかないとの不満の声は、日本同様に韓国でも多いのが実態。飲食店経営者たちは感染の再拡大を前に「また営業規制が始まるのでは」と身構えています。

「理念で飯は食えない」

 ――政府の防疫や経済対策を、どう評価しますか。

 政治家や政府の官僚の誰かが…

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