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看護学生に国際的視野を 青年海外協力隊の体験を学ぶ

山本大輔
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 日本に暮らす外国人が当たり前となった多国籍社会を迎え、国際的な視野をもつ看護師を育成しようとする取り組みが広がっている。北九州市で11月にあった一日研修を取材した。

 11月25日午前10時前、北九州市八幡東区にある国際協力機構(JICA)九州センターを、山口県下関市の下関看護リハビリテーション学校看護学科の2年生32人が訪れた。研修のテーマは「国際看護」。午後3時過ぎまで、青年海外協力隊に参加した看護師らの体験談を聞いたり、国際保健などに関するJICAの取り組みを学んだりした。

 広い視野を持つ看護師の育成が同校の目的。国際協力事業や国際的な健康問題、開発途上国の現状などを理解するために、国内外で研修を受けるプログラムを組んでおり、今回もその一環だった。

 2009~11年に南米ベネズエラの山岳地帯の小さな村で勤務した看護師の話を、学生たちはメモをとるなどして熱心に聞いていた。

 「村唯一の診療所で採血やX線などの検査はできない。医療機器がなく、患者さんは先生の診断書を持って都市部に行き、検査を受けてその結果を持ち帰り、村で再度の診察を受ける。そこで内服や注射などの必要が出たら、また都市部へ行く。病気の治療をすぐに受けられない、手間のかかる診療でした」

 ベネズエラでの看護活動は見たこともない病気や寄生虫に遭遇するなど、日本では考えられないような苦労が多かったという。だが看護師はその経験があったからこそ、「帰国後10年たつが、日本にいて国際協力は何ができるのか、いつも考えている。みなさんは将来、医療に携わることになるが、世界的な視点で健康問題だけではなく、様々なことに目を向け、考え、知る。それがグローバルな思考につながり、視野の広い看護師になれると思う」と語った。

 研修の途中、「海外で働きたい人」と質問された学生たちだが、一人も手を上げなかった。昼食時間に直接、理由を聞いてみると、「言葉ができない」「自信がない」「感染症が怖い」――。ただ、だれもが「興味はある」「世界の現状を知ることは意味がある」と強調した。

 川﨑唯さん(20)は「日本にいる外国人に看護できたらいいなと思った。言葉が必要なら勉強するしかない。看護の対象は日本人も外国人も関係ない。そういう気持ちになれただけでも、今日は来てよかった」。

 JICAから研修事業を委託されているNPO法人「九州海外協力協会」の橋口恵利子さん(51)は、「まずは海外のことに関心をもってもらうことが最初。看護師になりたい人は、人を助けたいという意思がある人たちなので、そうした気持ちを海外にも向けていただけたらうれしい」。その意味では多くの学生が国際看護への第一歩を踏み出した研修となった。(山本大輔)