出生前検査 そもそも女性が「選択」できる社会になっているか

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科学医療部次長・岡崎明子
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記者コラム「多事奏論」 岡崎明子

 世界で初めて、すべての妊婦に無料で出生前検査を提供する国となったのはデンマークだ。2004年から、ダウン症など染色体に異常がある子が生まれる確率を示す血液検査と、超音波検査を実施している。

 その結果、何が起きているのか。

 90%以上が検査を受け、子どもに異常があるとわかった親の95%以上が中絶を選択している。19年に生まれたダウン症の子はわずか18人。子どもの出生数が日本と違うとはいえ、少なさにショックを受けた。

 デンマークといえば、障害がある人もない人も同じように暮らすノーマライゼーション発祥の国だ。高福祉の恩恵を受けながら、ダウン症の子と共に暮らしていこうという選択をなぜ親はしないのか。

 オーフス大のスティーナ・ルー准教授は「検査を受ける時点では、その子の障害が重いのか、軽いのか、予測できないからです」と説明する。中絶を選んだ21組の夫婦への調査では、ほとんどがその決断をつらいと感じていたが、選択したことへの後悔はなかった。

 社会的背景が日本とは大きく異なる上、個々の夫婦にとっては悩んだ末の選択に違いない。だから一方的な論評はフェアでない。そう思いつつ、命の選別につながりかねない危うさも感じてしまう。

 日本では1990年代半ばに同じ血液検査が自由診療として始まったが、あまり広がらなかった。国が「妊婦に検査の存在を積極的に知らせない」という考えを示したことが大きい。

 それが妊娠初期に、より高い的中率で染色体異常がわかるというNIPTが開発され、大論争となった。9年前のことだ。

 各メディアは「命の選別につながりかねない」と報じた。私もそのひとりだった。

 ただ最近になって、この議論には大事な視点が欠けていることに気づいた。

 そもそも当事者である女性は…

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