アニメの聖地、静岡と山梨で急増 「ゆるキャン△」を支えた地域理解

和田翔太
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 静岡、山梨両県が舞台のアニメや漫画作品が注目を集めている。登場する場所を訪れる「聖地巡礼」も人気だ。民間会社の調査によると、静岡県のアニメの聖地は全国47都道府県で5番目に多く、山梨は人気アニメ「ゆるキャン△」の主な舞台となった。なぜ静岡と山梨が選ばれるのか。

 「聖地巡礼マップ」を運営するディップ(東京都)によると、アニメの聖地は2021年4月現在、静岡県が181件、山梨県が68件登録されている。静岡は14年の約4倍に増えた。先月15日には、一般社団法人アニメツーリズム協会による「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」に、山梨県北杜市が舞台の「スーパーカブ」や、昨年公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の浜松市などが新たに認定された。

 急増の要因について担当者は「都市部からのアクセスの良さやキャンプなどのアウトドアブームが考えられる」と分析する。

 両県はドラマや映画のロケ地としても人気だ。静岡県観光政策課によると、映画やテレビがロケ地に選んだ件数は18年度が1439件で、08年(226件)の6倍以上だ。同課の担当者は「県内では、フィルムコミッション(FC)と呼ばれるロケ支援団体が07年ごろから次々と誕生し、誘致や支援活動を充実させてきた」と話す。FCや市町との連携強化のため、県は10年に連絡協議会を立ち上げた。支援が手厚いこともロケ地として選ばれる背景にあるようだ。

「ラブライブ!サンシャイン!!」舞台の沼津市も聖地化

 都心から新幹線などを乗り継いで約2時間。駿河湾に面した静岡県沼津市内浦地区は、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地だ。市内を舞台に16年にアニメ放映が始まり、多くのファンが訪れる。

 市や商工会議所、地域住民らの働きかけもあり、沼津市は、アニメを町おこしに活用した成功例だ。

 聖地の一つ「三の浦総合案内所」の統計では、アニメ放送前の15年度の来所者は年間約9千人だったが、17年には9倍の約8万1千人に増えた。コロナ禍で減ったが、アニメ放映前と比較すると依然高い数字を維持している。

 山梨県身延町が主な舞台のアニメ「ゆるキャン△」は、キャンプなどを楽しむ女子高生たちの日常を描いた作品だ。18年にアニメの放映が始まると、ファンの「聖地巡礼」が急増した。

 アニメ放映をきっかけに一時的に訪問者が増えることはあるが、「聖地」として根付くのは難しいという。富士の国やまなしフィルム・コミッションの武川清志朗さん(35)は「地元の理解がなければ聖地化には繋がらない」と話す。

 年齢層が高い身延町の住民にアニメをどう受け入れてもらうか。まずは意見交換会や回覧板でアニメを周知した。その後、若手有志が協議会を立ち上げ、地元の観光や地域コミュニティーの活性化につなげた。

 同町には「ゆるキャン△」の舞台「本栖高校(旧下部小・中)」がある。地元では18年に若手の有志が「五条ケ丘活性化推進協議会」を立ち上げた。

 JR身延線甲斐常葉駅から旧校舎まで22カ所に案内板を設置。地域の人たちにも、訪れたファンに「どこから来たの?」などと声をかけてもらった。

 代表の深山光信さん(45)は「当初は想像もしていなかったが、地域の人が作品を受け入れてくれたおかげ」と手応えを話す。

 武川さんは実感している。「地域に魅力がなければゆるキャン△のような作品は生まれない。地元を大切にしたいという思いが大切だ」(和田翔太)