先行きが不透明な現代社会。生き残れるかどうかは能力次第と語られますが、人間の能力は学力だけでは測れません。これからを生きるために必要な能力とは何なのか、を考えます。
大人の従来の能力観、子どもをつぶす恐れ 寺子屋ネット福岡代表取締役の鳥羽和久さん
昨今、グローバル社会で活躍するには、飛び抜けた能力を身につけなければならないという言説を目にします。私は福岡市で単位制高校と学習塾を経営しています。150人の小中高生が通っていますが子どもがその言説にリアリティーを感じているか、というと疑問です。
というのも、子どもたちの多くは新しい形の「成功」に魅力を感じているからです。既存の枠組みの中で突き抜けるのではなく、物事の新しい見せ方や楽しみ方を発明する。序列の中で成り上がるよりも環境や視点を変えて輝くといった「成功」です。最近、なりたい職業の上位にユーチューバーが入るようになったのは、こうした意識変化の表れではないでしょうか。
背景にあるのは、社会における「成功」のかたちの多様化です。最近の子どもはよく「ワンチャン(ワンチャンス)あるかも」という言葉を使います。私は偶然性の時代と呼んでいるのですが、わずかな条件の違いでどうにでもなってしまう不確実な現実を生きているからにほかなりません。どんな状況でも乗り越えられる卓越した能力を身につける、という感覚とは違います。
日本でも唱えられて久しい「能力主義」。鳥羽さんは、「能力と人間性の評価は別物」と強調します。後半ではアメリカ思想史研究者の会田弘継さんが、「能力主義」が先行するアメリカで起きていることを踏まえ、能力主義を続けることの危惧を指摘。ハーバード大に進学したバイオリニストの廣津留すみれさんが、自身の経験から感じた「本当に必要な能力」について語っています。
一方、大人は旧来の「成功」…
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- 【視点】
「学歴では、創造力や人柄などは測れない」。廣津留さんの言う通りだ。しかし、学歴のみならず、創造力や人格の形成にも、貧富の格差が厳然と刻まれる事実も考えなければならない。 政治学者ロバート・パットナムは著書『われらの子ども』(2015)
- 【視点】
協調性や粘り強さ、創造性といったものが、内申表の評価に入る動きがあるとは驚きました。そして実に不気味です。 このような能力評価の恐ろしさは、協調性や粘り強さ、創造性といったものが、個人の中にあたかも取り出せるものかのように存在している

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