流行語、五輪とコロナ、光と影のちぐはぐさ 選考委員はどう見たのか

川村貴大
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 リアル二刀流、ゴン攻め、ビッタビタ――。「2021ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)が1日発表され、スポーツ関連の明るい言葉の数々がトップテンに選ばれた。一方で、東京五輪・パラリンピックが浮き彫りにした矛盾やコロナ関連の言葉もランクインし、現代社会の「光と影」を色濃く反映する結果となった。

 「ちぐはぐなパッチワークを見るように五輪のニュース、コロナのニュース」

 この短歌は、選考委員で歌人の俵万智さんが8月にツイッターに投稿し、1・8万の「いいね」を集めた。今年の流行語たちを眺めると、五輪パラリンピックなどのスポーツに対する感動と、猛威を振るうコロナに対する不安とが混ざり合った世相がにじんでいることに気づかされる。

 年間大賞に選ばれたのは、大リーグ・エンゼルスで活躍し、今季のアメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた大谷翔平選手に関する「リアル二刀流/ショータイム」だった。今季は打者としてリーグ3位の46本塁打を放ち、投手としてはチーム最多の9勝を挙げ、投打の二刀流を成功させた。試合で大谷選手が登場すると、実況アナウンサーは「イッツ、ショー(翔)タイム!」と叫び、観客は歓声を上げた。

 「ゴン攻め/ビッタビタ」は、東京五輪の新競技であるスケートボードのテレビ中継で、プロスケートボーダーの瀬尻稜(りょう)選手が解説に使ったことで広まった。瀬尻選手はこの日の表彰式にメッセージを寄せ、「ただただびっくりしております。東京五輪の解説時に、自分なりに自然体で話していただけで、まさかその中の言葉がこんなにも反響をもらえるなんて、思ってもいませんでした」とコメント。「気負いせず自然体で話せたのは、間違いなくパートナーを組んでくれた(フジテレビの)倉田(大誠)アナウンサーのおかげ」と感謝を述べた。

 「スギムライジング」は、東京パラリンピックの競技「ボッチャ」で日本初の金メダルを獲得した杉村英孝選手の得意技を指す言葉だ。ボッチャは、ジャックボールと呼ばれる目標となる白い球をめがけて、赤と青の6球ずつを投げたり転がしたりして、いかに近づけられるかを競う競技。「ライジング」は密集した球の上に自分の球を乗り上げさせる高難度の技で、高い精度を誇る杉村選手のライジングは「スギムライジング」と呼ばれる。

 登壇した杉村選手は、「ボッチャは障害の有無にかかわらず、誰もが楽しめるスポーツ。共生社会を体現できる象徴的なスポーツとして、これからも多くの方に楽しんでいただきたい。ぜひその際はスギムライジングに挑戦してほしいと思っています」と語った。

 俵さんは講評で、「おおむね暗い世相の中で、オリンピック、パラリンピック、大谷選手の活躍といったスポーツの力はやっぱり大きいなと、改めて思った1年でした」と振り返った。同時に、「トップテンの言葉を見ると嫌な言葉も入っている。嫌な言葉があるということは、嫌な現実があるということ。それは言葉からの警告なんだというふうに受け止めて、現実をしっかり見なければいけない」と語った。

 トップテンの中から「嫌な言葉」として挙げるとすれば、一つは「ぼったくり男爵」だろう。これは、ワシントン・ポスト国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の商業主義的な姿勢を批判して用いた「Baron Von Ripper―off」を和訳したものだ。世界中でコロナが猛威を振るう中で、日本政府とIOCは東京五輪・パラリンピックの開催に突き進んだ。

 トップテン入りした「ジェンダー平等」が注目を集めた一つのきっかけは、大会組織委の森喜朗会長(当時)が日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」と、女性を蔑視する発言をしたことだった。その後、五輪パラの開閉会式の演出統括者が女性タレントの容姿を侮辱したとして辞任に追い込まれるなど不祥事が相次ぎ、大会の意義そのものが根底から問われた。

 昨年のトップテンはコロナ関連の言葉が半数を占めたが、今年は「人流」と「黙食」の二つだった。ノミネートされた30語の中には「変異株」「自宅療養」「路上飲み」なども入っていた。

 選考委員で東京大名誉教授の姜尚中さんは「生きの良い言葉が今年はなかった。コロナがずっと尾を引いていて、すぐにでも口に出したいような勢いのある新しい言葉や流行語を発見するのが難しかった。全体としてはくすんだ感じだったが、その中でも大谷さんの活躍もあって、明るいものを求めているように感じた。来年はなんとかコロナの影が払拭(ふっしょく)されてほしいし、そうすればきっと、はじけるような言葉が待っているんじゃないかと期待している」と話した。川村貴大