99.99%ないと思った復活劇 国枝慎吾が明かす金メダルの舞台裏

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稲垣康介
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 今年9月、東京パラリンピック車いすテニス男子シングルスで国枝慎吾(37)=ユニクロ=は2大会ぶり3度目の金メダルを手にした。5試合すべてストレート勝ちという、かっこよすぎる復活劇だった。しかし、内実は開幕直前まで迷いと焦りで眠れない1カ月を過ごしていた。苦悩の舞台裏を本人が明かした。

 「7月のウィンブルドンで初戦敗退した後ですね、このままじゃいかんぞと思ったのは。納得いくプレーとはほど遠かったので」

 パラリンピックの開幕は1カ月半後に迫っていた。問題点はわかっていた。3月に高い打点でも強打が出来るようバックハンドの改造に着手した。グリップやテイクバックの修正で試行錯誤の最中だった。年明けの全豪で優勝を逃し、現状維持では金メダルは難しいという危機感があった。

 「改造したことで高い打点で強く打てる手応えはつかみつつあったんですけど、ほかの打点のショットが相手にとって怖さのないものになっていた」

 岩見亮コーチに相談を持ちかけた。全豪、全米を制した2020年のころのフォームに戻したらどうか。高く弾むボールへの対処は、逆に前に出ることでバウンドの上がりばなをたたく戦法で乗り切ろう、と。

 岩見コーチも同意した。

 時間の猶予はない。英国遠征から日本に戻ったのは開幕まで3週間のタイミングだった。しかし、3カ月間、懸命に取り組んだフォーム改造は、すでに体の動きに染みついていた。

 「戻そうと思っても戻りきっていない感覚がずっとありました。岩見コーチとも衝突しました。しっくり来ていない不満が僕から出る。首をひねる回数が増える。『これじゃあ、東京パラは厳しいですよね』と愚痴ることもありました」

 幸いにも、岩見コーチはブレなかった。「やると決めたんだから貫こうよ」

 焦りから眠りが浅くなった。睡眠導入剤に頼る夜が始まった。

 「7月の時点でバックハンド…

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