どつかれても笑かしたる 酒井くにお・とおるの語る芸人・正司敏江

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土井恵里奈
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 どつかれ、蹴られ、それでも爆笑を取るのはこの人しかいなかった。芸人・正司敏江さん。「正司敏江・玲児」として夫婦の「どつき漫才」で天下を取り、この秋80歳で逝った。芸人仲間の「酒井くにお・とおる」さんが、横顔を語る。

横山ひろしが語る芸人 どつき漫才の正司敏江「頂上も地獄も見た人」

舞台で壮大な夫婦喧嘩(げんか)、いや夫婦漫才を繰り広げた芸人の人生とは。親交の深かった芸人仲間が語ります。

 ものすごい苦労人でした。香川の小豆島から大阪へ出てきて、工場に務め、そのあと「かしまし娘」の家で働いて。そこから、夫婦漫才で大スターになった人です。

 舞台に上がると、喝采がすごかった。すごすぎて(静かにならないから)、歓声が収まるまで、敏江さんは着物をめくって走り回って場をつないでいました。全国どこへ行っても売れていて、北海道でも「敏江~」って声がかかっていました。

蹴りもありの「どつき漫才」

 どつき漫才は、後ろから足でバーンと蹴るんです。そしたら舞台の袖までブアーッて滑る。スライディング。玲児師匠のツッコミがきつすぎるんだけど、敏江師匠の愛らしさと笑顔で、きつさが吹っ飛んでまう。

 (2人のどつき漫才が生まれた)新世界の劇場は、日雇い労働のお客さんの集まるところです。笑わせるのがほんとに難しい。最前列で将棋を指したりカップ酒をのんだり。客席でけんかが始まり、芸人に「けんかの解説せえ」なんていう劇場だもん。(投げ銭で)お札をくれたかと思えば、「帰りの電車賃がないから半分返して」って言う人もいて。人間味あふれる舞台で、(師匠たちは)どつき合いや蹴り倒しをやったんですよね。

私生活のほころびネタに

 お二人は離婚後もコンビを続けて、全部ネタにしていました。敏江師匠は「養育費もらってへんのに」「お前が浮気したからや」と反撃。普通は私生活を隠すのに、2人の漫才は現実だから、画期的でした。

 敏江師匠の着物の帯は、玲児師匠がいっつも結んでいました。硬くて長い帯をね。別れているのに、不思議でしたね。

12月11日には、正司敏江追悼公演が開かれる。出演は桂福団治、酒井くにお・とおる、横山ひろし・春けいこ、海原はるか・かなた、三吾・美ユル、森脇健児シンデレラエキスプレス、植村茂浩、アメリカザリガニチキチキジョニーら。午後2時から大阪市中央区の「DAIHATSU 心斎橋角座」で。問い合わせは06・6258・8085。

敏江さんは別れた夫をどう思っていたのか。後半では、元妻としての胸の内、夫亡き後はピン芸人として舞台に立ち続けた日々に迫ります。

■夫の葬式、元妻として…

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