諫早湾開門「無力化」めぐる訴訟の差し戻し審、来年3月に判決へ

布田一樹
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 国営諫早湾干拓事業長崎県)をめぐり、堤防排水門の開門を命じた確定判決を強制しないよう国が求めた訴訟の差し戻し審が1日、福岡高裁(岩木宰裁判長)で結審した。この日の弁論で漁業者側は、高裁が提案していた和解協議に応じなかった国の対応を改めて批判した。判決は来年3月25日に言い渡される。

 訴訟は、開門を命じた2010年の福岡高裁判決を強制しないよう国が求めたもの。この判決の確定後も国は開門せず、命令の「無力化」を求めて提訴した。

 福岡高裁は18年に「無力化」を認めたが、最高裁は19年に審理を差し戻した。ただ、この時の補足意見で、裁判長は2件の関連訴訟で非開門の判断が確定していることなどを「考慮する余地がある」と言及。再審理を経て、あらためて開門命令を「無力化」させる方向性を示唆した。

 差し戻し審で高裁は今年4月、「紛争を抜本的に解決するためには、話し合いによる解決のほかに方法はない」として、開門の是非には触れずに和解協議の場を設けるよう提案した。漁業者側は賛同したが、国は「開門によらない(有明海再生のための)基金による和解が最良」との立場で、「開門の余地を残した和解協議の席に着くことはできない」と折り合わなかった。

 1日の弁論で漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「裁判所の提案に国が何ら応答することもなく全面的に否定したことに、心から残念に思っている」と意見陳述。「開門」の確定判決から時間が経ち、漁獲量が増えるなど事情が変わっているとして開門を強制させるのは「権利の乱用」とする国の主張について、吉野隆二郎弁護士は「漁獲量は低迷したままで事情の変化はなく、権利乱用の主張は認められない」と反論した。

 国は追加の書面提出や意見陳述をせず、閉廷後に農林水産省の担当者が記者会見し、「前回までに提出した書面や意見書で、必要な主張、立証や国の立場の説明を尽くしたと考えている」と述べた。(布田一樹)