「おじさん」社員がTikTok、フォロワー5万人超 採用に好影響
動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を活用し、若者へ積極的にPRを始めた企業が兵庫県明石市にある。オートバイ部品の研磨などを手がける三陽工業(社員約1500人)だ。平均年齢57歳の男性社員3人が登場する動画を毎日投稿し、フォロワー数は5万人を超えた。同社では社員の採用活動に、効果が出始めているという。
11月18日の午後0時半。人材戦略部長の小杉義明さん(56)、顧問の森本憲二さん(72)、総務課長の西弘誠さん(44)の3人や社員が社内に集合。約30分間かけて、スマホで「前屈ができるか対決」など動画2本を撮り、広報担当者が編集し、ティックトックに動画を投稿した。
発案したのは小杉さんだ。これまで同社はツイッターなどSNSを活用していたが、ティックトックは使っていなかった。「若者が身近に感じているものに、会社からアプローチをしたい」と提案し、今年2月にアカウントを開設。土日も含め、毎日欠かさず投稿を続けている。
明石南高校の硬式野球部で投手だった森本さんは、72歳でも、同社の現役の軟式野球部員だ。グラウンドで投球や打撃練習をする動画を投稿すると、「すごすぎる」「こういうおじいちゃんと野球したい」などのコメントが寄せられ、再生回数も増加。3人が恐竜から逃げる動画は、約310万回再生された。
フォロワー数が増えたため、8月からティックトックのライブ配信にも挑戦。視聴者とリモート飲み会をしたり、質問に答えたりして、多いときは若者ら約1900人が視聴した。
新卒内定者8人のうち3人「動画がきっかけ」
投稿の効果は徐々に表れつつあるという。今春に開かれた新卒採用のオンライン説明会で、参加者90人のうち、約7割が同社のティックトックを見ていた。来春に入社予定の新卒内定者8人のうち3人は、動画を見たのがきっかけで応募をしたという。
内定者の一人は、「おじさんたちの姿に衝撃を受けた。ティックトックに取り組んでいる企業は珍しく、時代の流れに対応できるのではないか」と考え、応募したという。3月に573件だった中途採用の問い合わせは、10月には3割近く増え、718件に増えた。
今の目標は、フォロワー数を東京にある企業並みの10万人まで増やすことだ。発案した小杉さんは「毎日投稿するのは大変だけど、応援してもらい励みになる。実際に社員の採用にもつながり、始めて良かった」と振り返る。
西弘さんは「コロナ禍で社員同士で顔を合わせる機会が減っている中、コミュニケーションに役立っている」。森本さんは「会社を多くの方に知って頂くきっかけにして、入社希望者が増えてくれたらありがたい」と話している。(森直由)
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- 【視点】
TikTokの世界の月間アクティブユーザー数(MAU)は、2022年に15億人を突破するとApp Annieが予測するなど勢いは止まりませんね。おじさん社員とTikTokの組み合わせといえば、タクシー会社の三和交通の「踊るタクシーおじさん」
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