東レ社長が語る雇用 「うちはクビは切らない、早期退職もない」 

景気アンケート2021年秋

聞き手・友田雄大
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 岸田政権は「新しい資本主義」を打ち出した。具体的な議論はどんな方向に向かうべきか。「従業員のクビは切らない主義」という東レの日覚昭広社長に聞いた。

 「新しい資本主義」によって、いまの資本主義の課題克服を目指すことに異論はありません。格差の拡大や気候変動に伴う生態系の崩壊といった課題は解決すべきです。ただ、今後政策の進捗(しんちょく)を見極めなければ、その評価はできない。

 できれば、日本的ないわゆる「公益資本主義」を実現してほしいが、そこまでまとまるかは、ちょっと分からないですね。

 株主第一主義の見直しが最近、欧米で言われています。英国ではコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)も従業員重視に切り替わった。米国でも主な企業経営者でつくる団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、株主第一主義の見直しにかじを切った。

 彼らはいま、日本が昔からやってきた、人を大事にするなど社会貢献しつつ稼ぐ公益資本主義を一生懸命勉強しているところなんですよ。

 ところが日本は逆に、欧米がやめようとしている株主第一主義、つまり欧米からすると昔のコードを、一生懸命守ろうとしている。それを「新しい資本主義」で変えて欲しいと思いますね。

 東レは終身雇用で、人を基本とする経営をずっとやってきています。もちろん配当も増やしていますが、借金してまで配当するというような米国式ではない。やっぱり従業員があって企業が成り立っているというのが基本的な考え方。

 うちは従業員のクビは切らない主義なんですよ。解雇だけでなく、早期退職などもない。雇用を守ることを大事にしています。

 首相から出た「3%の賃上げ期待」という言葉は、ぼくはあまり気にしていない。来年の春季労使交渉も議論するのは労使ですから。ただ、東レとしては、月給も一時金も、ずっと上げてきています。(聞き手・友田雄大)