福井市の浪花莉愛(りな)さん(12)は1歳8カ月のころ、脳腫瘍(のうしゅよう)の診断を受け、2度の大きな手術を受けた。
3歳を過ぎたころ、脳幹近くに腫瘍が再発し、手術と放射線治療を受けた。
手術の合併症で、のみこみがうまくいかない嚥下(えんげ)障害や呼吸障害がみられ、のどに穴をあける気管切開をしていた。
それでもつばが肺に入っておきる肺炎を繰り返したため、声帯を含む喉頭(こうとう)をとり、声が出なくなっていた。
体の右半分が自由に動かないまひも残っていた。
2歳を前に2度の開頭手術を受けた莉愛さん。度重なる再発で治療は続き、家族は温かく支え続けています。病気と共に歩む莉愛さんの成長と家族のこれまでを、全4回にわたって紹介します。
小学校入学が近づく莉愛さんを、父の浩和さん(52)と母(45)は、普通学級に通わせたいと考えていた。
しかし、地元の教育委員会は特別支援学校がよいのではという。
両親は住んでいる学区の小学校に直接、打診した。だが断られた。
隣の学区の小学校にも相談をした。検討してもいいとの返事だった。
「莉愛ちゃんを呼ぼう」
検討をする会議には、5歳のころから莉愛さんを診る、在宅医療専門のオレンジホームケアクリニック(福井市)の紅谷(べにや)浩之理事長(45)も出席してくれた。
このころ、莉愛さんはまっすぐ歩くことができなかった。立っているだけで転ぶこともあった。
「気管切開をしているのに大丈夫か?」
「1人だけ話せなくて、どうやって授業を進めるのか?」
「大きなけがをしたらどうする?」
不安の声が多くでていた。
「支援学校でリハビリをして、改善したら普通学級に移ればいいのでは」という意見もあった。
「莉愛ちゃんを呼ぼう」
紅谷さんは、莉愛さん本人の意見を聞こうと提案した。
次の会議にでた莉愛さんに…