福井市の浪花莉愛(りな)さん(12)は2歳を前に、脳腫瘍(のうしゅよう)の手術の後、声帯をとる手術をうけて声を失った。
2021年5月、父親の浩和さん(52)はツイッターで偶然、研究開発中の新しいタイプの人工喉頭(こうとう)の存在を知った。
「これは、新型の人工喉頭です」
東京医科歯科大学摂食嚥下(えんげ)リハビリテーション学分野のアカウントの発信だった。
「これを使うと、声を失った方々がマウスピースを入れるだけで簡単にお話ができるようになります」
デバイスを使って、音を出す動画もあった。
開発をした大学院生の山田大志さん(29)が「こんにちは。これは、新型の人工喉頭です」などと話していた。
耳は聞こえるけれど、声を出せない莉愛さんは、口の動きや身ぶり手ぶり、筆談で、家族や友人とのやりとりをしてきた。
最近では、スマートフォンを使ってメッセージを送ることが増えていた。
伝えたいフレーズを選ぶと音が出るスマホのアプリも使い始めていた。
「いまの方法でいいかな」
そう浩和さんは思っていた。
だが「莉愛ちゃんと再びお話ができるかもしれない」と思った。
「素晴らしい技術。リナちゃんとも、これでお話しできるかも。片まひがあっても使えるのか、知りたいところ」と、書いてリツイートをした。
2歳を前に2度の開頭手術を受けた莉愛さん。度重なる再発で治療は続き、家族は温かく支え続けています。病気と共に歩む莉愛さんの成長と家族のこれまでを、全4回にわたって紹介します。この記事の末尾には、莉愛さんが新しいデバイスを使う様子を動画でご紹介しています。
「片まひどころか……」
山田さんは「片まひどころか…