手作りのピロシキはモスクワの家庭の味 パルナスの心も引き継ぐ
編集委員・副島英樹
現場へ! パルナス再び⑤
かつて関西で親しまれたパルナス製菓のCMには、「パルピロ、パルピロ」と軽快に繰り返すバージョンがあった。「パルナスのピロシキ」の略語だ。パルナスはケーキだけでなく、ロシア風ピロシキでも知られていた。
このピロシキの味を引き継ぐ店が大阪府豊中市にある。パルナス創業者の古角(こかど)松夫の弟、伍一(ごいち)(1929~94)が独立して74年に始めた「モンパルナス」だ。父、伍一の後を継ぐ社長の古角武司(62)は幼いころ、父が帰宅するとケーキの匂いがしていたのを覚えている。「パルナスの母」と呼ばれたモスクワの菓子職人エフドキヤ・オージナから、父は直接指導を受けていた。当時の父の写真を、今も武司は大切に保管している。
武司は今年5月、店舗を兵庫県内から豊中の阪急庄内駅近くに移して再出発した。コロナ禍で喫茶部門が打撃を受けた末の決断だった。新店舗の内装はインテリアデザイナーの長男、尚也(なおや)(32)が担った。
尚也は5年前、本場のピロシ…