「山のタイタニック」復活へ ナチスの金塊運んだ国境駅、ホテルに

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カンフラン=青田秀樹
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 ピレネー山脈のスペイン側の山中に、数奇な歴史と壮麗な造りから「山のタイタニック」と呼ばれる駅舎がある。半世紀前にフランスとの国際路線が途絶えて寂れたが、路線復活の機運が盛り上がり、ホテルとして息を吹き返そうとしている。(カンフラン=青田秀樹)

朽ちかけても人を引きつける

 フランス・ボルドーの南230キロ、国境の山脈を貫く道路トンネルを抜け、標高約1200メートルの谷に向かうと、間口が241メートルに及ぶ旧カンフラン駅が姿を見せた。ところどころがフェンスで覆われて工事が続く。地元スペインのアラゴン自治州が建物を貸し出し、2022年末に104室を備える五つ星ホテルを開業させる計画だ。

 1928年に開業した国際駅は、州の誇りであり、近代化のシンボルだったという。室内にも細かな装飾が施され、駅舎では、両国の鉄道員、国境管理や税関の職員が働き、宿舎としても使われた。

 駅は古来、スペイン北西部サンティアゴ・デ・コンポステラへ向かう巡礼の街道上に位置する。地中海側と大西洋側に加えて、街道に沿ってピレネー山脈を貫く物流の動脈として、19世紀半ばに鉄道を通す構想が浮上。第1次大戦をはさんで実現まで半世紀以上かかった。

 しかし、10年もたたぬうちにスペイン内戦が発生。フランコ独裁体制となって一時往来が途絶えた。第2次大戦中はスパイが行き交った。仏南部にナチスに協力する政権が誕生すると、軍事車両や砲弾用の鋼材がドイツへ送り出され、その代金とみられる金塊がスペインへと運び込まれた。

 終戦前後に閉ざされたルートは48年に再開したものの、70年に仏側で橋が崩落する脱線事故が発生。半世紀以上、国際路線としての役割は失われたままだ。

 スペイン側の路線は運行を続けてきたが、旧駅舎に代わって設けられたコンパクトな新駅舎から、スペイン北東部の主要都市で州都のサラゴサとの間で朝夕1本ずつ列車が発着するだけだ。

 旧駅舎はそれでもなお人を引きつける。巡礼の際に駅舎を見かけたというドイツ在住のホセ・フェルナンデスさん(69)は妻と妹と再訪した。「ホテルになるなんて信じられないが、完成したらまた来たい」

 朽ちかけた駅舎を訪ねた00年、金塊輸送の資料を見つけたフランスの元バス運転手ジョナタン・ディアズさん(61)は、観光案内所などで歴史が語り継がれるよう期待する。公文書を調べあげ、地元住民を訪ねて史実を明らかにしてきた。退職して別の地域に移り住んだ今も「歴史の証人であり続ける」と話す。

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