歴史修正主義を扇動した「論破」文化 感情に訴える言葉の危険性

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聞き手・田中聡子
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 相手を言い負かした方が正しいと思わせる「論破」という言葉がいまネット上にあふれています。社会学者の倉橋耕平さんは、この言葉の持つ効果を巧みに利用したのが「歴史修正主義だ」と指摘しています。1980年代末に生まれた「論破カルチャー」が社会にもたらす負の影響について、聞きました。

 1982年生まれ。専門はメディア文化論、ジェンダー論。著書に「歴史修正主義とサブカルチャー」など。

 SNSなどで顕著に見られる「論破」のカルチャーは、ネットによって新たに生まれたものではありません。

別次元のものを同じ土俵で議論

 その兆しは1980年代末から始まった討論系のテレビ番組に見られます。討論番組では、専門家ではないコメンテーターなどが議論に参加します。視聴者は、出演者が政治家や専門家をたじろがせる様子を面白がりました。同じ時期、ディベートや説得力を重視した自己啓発本がブームになりました。

後半では、論破文化が日本に広がった背景や代表格の政治家、「男らしさ」をテストするマッチョな側面について語ります。

 こうした流れの中で「歴史を…

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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2021年12月6日12時51分 投稿
    【視点】

    前提を無視した無茶な二項対立構造をつくりだし議論を矮小化する手法は、近頃本当によく見かける。そういう議論をふっかけられたら、そもそもその相手には前提理解がないのか、あるいは真面目に議論するつもりはないということなので、いずれにしても真面目に

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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2021年12月6日12時53分 投稿
    【視点】

    論破は、男性の「男らしさをテストする」というカルチャーの一つという倉橋先生のご指摘に大変共感します。まず、論破を売りにする男性はいても、女性はいません。相手を議論で打ち負かすという振る舞いは、競争を求められる男性には〈男らしさ〉の証明になっ

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