ノーベル賞真鍋さん半世紀前のDX 計算科学も牽引、「富岳」の礎に

有料会員記事

竹野内崇宏
[PR]

 ノーベル物理学賞に決まった米プリンストン大の真鍋淑郎さん(90)は気候変動研究だけでなく、シミュレーションによる計算科学も牽引(けんいん)してきた。当初は結果の妥当性に疑義を呈されることもあったが、半世紀かけて信頼を築き、世界最速のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」にもつながる礎となった。デジタル技術による変革を意味する「デジタルトランスフォーメーション(DX)の立役者」との声も上がる。

 「世界で最もスパコンを使う男」。真鍋さんはそう呼ばれていた。仮想の地球を計算機の中に作り上げ、将来の地球に何が起こるかを突き止めようとした。

 数日先の天気を予測する気象に対し、真鍋さんが研究する気候は数十年先や、時には数千年単位の大気の変化を探る。太陽光のエネルギーや地球の自転で気温や風向がどう変化するのか。大気をマス目で縦横に区切り、隣のマスとの空気やエネルギーの出入りを方程式で計算した。

 結果は、マス目を細かくするほど、海や陸のような違いも考慮するほど正確になる。しかし、計算量はどんどん膨大になってしまう。真鍋さんが博士号を取った1950年代、日本には高速な計算機で自由に研究できる環境はなかった。

 59年に気象庁に入った古川武彦・元予報課長(81)は「当時は気象庁もIBMのコンピューターが導入されたばかりで、数値予報の信用も低かった。予報官は経験則でシャーッと天気図を鉛筆で描いた時代で、数値予報の担当者の肩身は狭そうだった」と振り返る。

 真鍋さんは58年に渡米し、米国気象局を経てプリンストン大へ。プリンストンは原子爆弾やコンピューターを開発した天才数学者フォン・ノイマンが、計算機で気象予測を革新しようと挑んだ拠点でもあった。

 真鍋さんはここで最先端の計算機を駆使。二酸化炭素の濃度が高まると、地表の気温が上がることを発見し、60年代から次々に発表した。こうした成果が90年、温室ガスで気候が変化する「恐れがある」とした国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1次報告書に反映された。

 だが、当時は専門家の間でも…

この記事は有料会員記事です。残り514文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!