「丸刈り」に感動する教員、嫌う中学生 川口方式で伝統「ぶっ壊す」

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金島淑華
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部活文化を問う

 「県大会の開会式で、球児全員が丸刈りで整列したら感動するよなあ」

 15年ほど前、武田尚大さん(38)が生まれ育った埼玉県川口市で中学校の教員になったばかりの頃、耳にした言葉だ。

 市の大会が開かれていた球場のバックネット裏、大会本部での出来事だったと記憶している。

 その場にいた指導者たちは皆、うなずいていた。

 丸刈りは気合と根性の表れ。髪を伸ばすのは「モテたい」などといった雑念があるからだ、とみなされていた。

 武田さんも野球部だった高校時代は丸刈りだった。「髪を伸ばすことへのあこがれはあったけど、疑問は抱かなかった」。教員になってからも「背中で見せる」ため、何度か丸刈りにしている。当然のように、自身が指導する軟式野球部の部員も代々、丸刈りだった。

 2015年、耳を疑う一報が飛び込んできた。

 ある中学校の軟式野球部が、廃部になるのだと。

 もともと部員確保が難しい小規模の学校を除けば、市内の中学校には軟式野球部があるのが当たり前だった。その一つが部員不足で消えるとは――。

 国内の野球人口の減少が叫ばれていたが、「野球どころといわれた川口にいるとピンとこなかった。でも、一気に危機感がわきました」。

 同時に、その数年前の苦い記憶がよみがえった。

 体育の授業でソフトボールを教えたときのこと。うまい男子生徒が3人いた。小学校時代に地域のソフトボールチームでプレーしていたが、中学ではバレーボール部を選んだという。

 「なんで野球部に入らなかったんだ?」

 武田さんが尋ねると、3人は口をそろえて言った。

 「丸刈りが嫌だったので………

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2021年12月11日16時25分 投稿

    【解説】 日本中学校体育連盟への登録人口をみると、2019年度の男子の軟式野球は2003年度と比べ、52%に減りました。  少子化で同時期に中学生自体の数が約8割に減っていることを差し引いても、「半減」は不人気の現れです。その他、減少幅が大きいの