DX化した野球、足し算に変えた柔道 コロナ禍を福に転じた部活動

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塩谷耕吾
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部活文化を問う

 走っても、走っても、止まるところがない――。

 高校野球で春夏通算7度の甲子園出場を誇る金沢桜丘高(石川)で監督を務める井村茂雄(44)は自らの教員生活を、そう感じていた。

 練習試合の予定は1年前から埋まっている。教員としての本業も事情は同じ。前年度の流れを引き継ぎ、この週の総合学習は学園祭準備、その次は薬物乱用防止教室……。

 「1年間の指導を省みる時がない。結果、同じルーティンを繰り返してきた。4月からの新学期で『新たなチャレンジを』と考える時間も余裕もなかった」

 昨年の春、その「ルーティン」が破れた。コロナ禍により、いや応なく。

 緊急事態宣言で休校となった昨年4月中旬、デジタルツールの勉強会が、全職員参加、オンラインで行われた。オンライン会議の参加方法すら怪しかった井村は、講師役となった若い教員から、オンライン授業や動画編集ソフトの使い方を必死に学び、ピンと来た。

 「これは使える!」

 2回の勉強会のあとも有志で集まり、動画編集に熱中した。

 「指導が全く変わった」

 オンライン授業はもちろん、野球部の指導に使う動画作りも始めた。様々な試合の盗塁の場面を集め、ポイントにテロップを入れて編集する。トレーナーを招いた際にカメラを回し、トレーニング方法の解説や注意事項を動画に残し、web上で部員と共有した。

 部活動が再開された昨年夏以降も、感染症対策で練習時間の制限は続いた。

 部員が動画を見て予習し、短い練習時間で実践する流れができた。

 「口で言うより、映像で見せる方が生徒の食いつきもいいし、理解度が上がった」

 最初は教員向けの無料の動画編集ソフトを使っていたが、しばらくしてプロ向けの有料ソフトを購入した。「成長は今も自分の中で続いている」。すでに15本の動画が完成し、アーカイブができた。新入部員に自分の指導の基本を理解してもらうことにも役立っている。

「部活」を考える連載「子どもとスポーツ」第4部。コロナ禍で井村監督自身にも変化が産まれました。

 ある日、生徒指導室に相談に来た生徒に井村は問いかけた。「どうした?」

 その様子を見た別の教員が驚…

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2021年12月15日16時27分 投稿

    【視点】 新型コロナ禍で部活動は制限を受けましたが、禍を転じて福となす、で、部活文化を考え直すきっかけとなった面があります。  記事にあるように、活動停止になった時間を有効に使い、指導スキルが上がったと実感する先生は少なくありません。  そして