「スマートに飲もう」 アサヒビールの提言が映す社会の変化

景気アンケート2021年秋

聞き手・山下裕志
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 ノンアルコールや低アルコールのビールテイスト飲料が人気だ。看板商品「スーパードライ」など王道のビールを主軸に販売してきたアサヒビールは昨年12月、過度な飲酒をなくし、飲み方の選択肢を増やす「スマートドリンキング」を提唱した。背景には社会と会社の変化があるという。親会社アサヒグループホールディングス(HD)の勝木敦志社長に聞いた。

 今年3~7月、ノンアルとアルコール度数の低い「微アル」のビールテイスト飲料の市場は、前年同月に比べて約2割も伸びました。飲食店に対してお酒の提供自粛が求められたこともあり、今年発売した度数0・5%(微アル)のビールテイスト飲料「ビアリー」を出す飲食店は約1万9千店に増えました。アサヒのサーバーを設置する飲食店のうち、1割に近づきつつあります。

 これまでノンアルというと、「飲酒運転を避けるために飲むもの」という私たちの固定観念がありました。でも最近の調査をみると、健康に配慮して飲む人がたくさんいるとわかった。アルコールが飲めないけれど、飲み会の空気が好きでノンアルに手を伸ばす人もいます。

 私たちが宣言した「スマートドリンキング」の根本にあるのは、人類のウェルビーイング(精神的にも身体的にも充足する状態)です。健康志向はどんどん高まり、私たちも不適切な飲酒は減らしたい。2010年にWHO(世界保健機関)で採択された「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」にも正面から向き合っています。

 たとえば生活習慣病のリスクは、純アルコールを男性なら40グラム以上、女性なら20グラム以上摂取すると高まるとされています。人それぞれの「ものさし」に当てはめて飲んでもらえるように、商品にアルコールのグラム数を表示するようにしました。微アルについても、これからも商品を増やし、新たなカテゴリーをつくりたい。

 SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業として、「責任ある飲酒」を掲げています。従来のビール会社は、量をたくさん売って経費をコントロールすれば利益が出ていた。しかし、社会も消費者の嗜好(しこう)も変わりました。量だけを追い求めても社会的な価値は生み出せません。

 お酒の楽しさや豊かさ、潤いは私たちが提供する価値で、人類にとってはなくてはならないものです。それを、アルコールの「害」の部分を減らしたかたちで広めていく。これまでも未成年の飲酒防止などに取り組んできましたが、ここへ来て加速させています。(聞き手・山下裕志)