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第6回障害ある人の「人権」とコインの裏表 職員の低い待遇、抜本的改善を

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聞き手・森本美紀
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 岸田政権は介護や保育、看護、障害福祉で働く人たちの賃金を3%程度引き上げる方針を掲げています。これらの分野における待遇の低さといった問題は改善されるのでしょうか。連載の6回目は、障害者支援に取り組む社会福祉法人「鴻沼福祉会」常務理事の斎藤なを子さんに話を聞きました。

斎藤なを子さんの三つの視点

1)障害福祉職員の低賃金は、障害のある人の「人権の水準」とコインの裏表

2)基本報酬アップと制度の見直しを。小ぶりな上げ幅では抜本的な改善にならない

3)基本給をベースに議論を。少なくとも全産業並みの賃金に

障害分野、新卒初任給の手取りは20万円いかず…

 ――障害福祉職員の賃金を3%、月額で9千円程度引き上げることをどう思いますか。

 賃金の改善につながることは結構ですし、やらないよりはましですが、あまりに小ぶりな上げ幅で、構造的な待遇の低さを抜本的に変える起爆剤になるとは思えません。

 9千円程度では、社会保険料や物価の上昇を差し引くと、給与は目減りし、帳消しにされてしまう心配があります。また、直接支援にあたる職員以外の職員についても、今回の処遇改善の収入をあてることができるよう柔軟な運用を認めるとされました。それは良いことなのですが、私が働く法人では、全職種の賃金に格差をつけない方針で運営しています。事務員や調理員、運転手らすべての職員も賃上げの対象にすると、1人当たりの上げ幅が薄くなる。全員9千円引き上げようとすれば、法人の持ち出しで対応するしかありません。今回の経済対策による交付金では職員の期待に十分こたえられない可能性があります。

 しかも、今回の対策は2月から9月まで。10月以降も継続できるよう臨時の報酬改定が行われることになりましたが、不十分です。全産業の平均並みの賃金にすることが喫緊の課題なのに、いつまでにどのくらい引き上げるのかに踏み込んでいません。本気で処遇を改善しようとしているのか、全体として期待はずれです。

 もともと、障害福祉分野の働き手の労働条件は賃金も含めて極めて厳しく、政府はちゃんと手をつけてこなかった。そんななか、コロナ禍で、賃金の低さや人手不足による長時間労働といった障害福祉の担い手の基盤の脆弱(ぜいじゃく)さが可視化された。

 ただ、今回の経済対策は、コロナ禍で特に医療や看護分野の厳しさが焦点化され、緊急措置を行うなかで、障害福祉も付け足しにされたような印象をぬぐえません。

 ――厚生労働省の賃金構造基本統計(2020年6月、10人以上の企業)では、介護職員(医療・福祉施設など)に毎月決まって支給される現金給与額(基本給に残業代、諸手当などを含む。役職者を含む)は25万2300円、全産業平均は33万600円で大きな開きがあります。また、政府の会議の資料では、介護分野の職員は29万3千円、全産業では35万2千円(いずれも賞与を含んだ月収換算。役職者除く)とされています。

 25万円でも現実とかけ離れているのが実感です。高齢者の介護などとひとくくりにされ、基本給だけではなく、手当や残業代も含まれ、数字がひとり歩きしないかと不安です。

 障害分野でいえば、新卒の初…

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