おやつでちょっと旅気分 温泉地の名物せんべい、新ブランドに高評価

大滝哲彰
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 コロナ禍で観光が制限され、土産菓子を作る企業は販路がオンラインに限られるなど大打撃を受けた。そんな状況下、三重県菰野町の製菓会社は、自宅でも旅の空気を感じてもらいたいと、新たな菓子ブランドを立ち上げた。コンセプトは「旅するお菓子」だ。

 新ブランド名「tabino ondo(たびのおんど)」を立ち上げたのは、約60年にわたって湯の山温泉名物の炭酸せんべいを売る「日の出屋製菓」。今夏ごろから京都のパティシエと、主力の炭酸せんべいに県内産の食材をアレンジした商品を開発してきた。「毎日のおやつにちょっとの旅気分を」と、商品のパッケージで県内の観光名所のイラストを旅日記風に紹介している。

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 新型コロナの第1波による緊急事態宣言が発出された昨春、同社3代目の千種啓資(ひろし)さん(41)は途方に暮れた。県外移動の自粛が求められ、観光地は閑散とした。出荷が止まり、生産も一時ストップ。出荷先から返品された炭酸せんべいを回収しながら考えた。「この先どうなるのか……」

 コロナ禍は収まることなく、政府のGoToキャンペーンも一時的な効果しかなかった。「このままでは土産物文化がなくなってしまう」。そんな危機感もあった。生き残るためには、新たな取り組みが求められていた。

 「いま、お土産にできることは何だろう」。その答えが「tabino ondo」の立ち上げだった。旅に出づらい世の中だからこそ、お菓子を食べながらその土地の空気を感じられる。地域を巡った気分になれる。食材と商品のパッケージにこだわり、まさに「旅するお菓子」をイメージした。

 第1弾として9月、鈴鹿市の伊勢抹茶、松阪市の和紅茶、南勢地域でとれるほうじ茶を使った商品の販売を始めた。3種のお茶をあんペーストにし、薄くてサクッとした食感の炭酸せんべいに付けて食べる「湯の花せんべいと餡(あん)」と、砕いた炭酸せんべいに3種の茶葉を使ったチョコレートをコーティングした「湯の花せんべいとフィアンティーヌ」の2商品だ。

 すると新ブランドの取り組みは、大手広告会社や百貨店などでつくる実行委員会が「おもてなし」をブランド化し、全国各地の中小企業の販売力を強化しようと企画した「OMOTENASHI Selection(おもてなしセレクション)」の金賞に選ばれた。審査員からは「今のご時世でも、三重県へ旅行したかのような気分になれる」「自宅で温泉地の温かさやおもてなしを感じてもらえるように配慮された、おもいやりにあふれる商品」と評価された。

 今後は県内の様々な食材を使った商品の開発を想定している。千種さんは「このお菓子が全国を旅して、三重の魅力を発信するものにしたい」と話す。

 同社のホームページ(https://www.hinodeya-seika.net/別ウインドウで開きます)からオンラインのほか、菰野町の「希望荘」山上館内の店舗、多気町の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」などで購入できる。(大滝哲彰)

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