会津のボクサーに迫る「定年」 哀愁漂う36歳はなぜリングに立つ

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伊藤雅哉
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 まだ現役を続けられるのか。

 37歳で「定年」を迎えてしまうのか。

 福島県郡山市のDANGAN郡山ジムに所属するプロボクサー、渡辺秀行(36)は9日、東京・後楽園ホールで選手生命をかけ、リングに上がる。

 フライ級(50・8キロ以下)のサウスポー。戦績は25戦8勝(6KO)14敗3分けで、いまは8連敗中。日本ランキングには入っていない。

 試合3日後の12日、渡辺は37歳の誕生日を迎える。

 日本ボクシングコミッション(JBC)のルールでは、日本ランキングに入っていない選手は基本的に37歳で「定年」になる。

 薄いグローブで殴り合うプロボクシングは、続けるほどに体にダメージがたまり、けがの危険性が高まるためだ。

 ランキングは日本王者の下に1位がいて、今は階級によって最大25位まである。

 「次の試合こそはと思って、ずーっとやってるんですね。自分なりに勉強して、体の使い方の理屈が分かってきた感じがあって」

 「ここまで来て、名誉とか地位とかどうでもよくなって、次こそは自分がやってきたことを証明したい。自分が信じてやってきたことを何とか形に変えたいです」

 どこか優しい口調で、言葉を選びながら語る。

 磐梯山のふもと、会津地方の猪苗代町の出身。高校時代、ケンカに巻き込まれて「大人数にボコボコにされた」ことから、強くなりたいとボクサーを志した。

 高校卒業後に就職で関東へ出て、埼玉県内のジムに入門。19歳で迎えたプロデビュー戦はTKO負けだった。

 その後、故郷に戻り、電気工事の仕事をしながらリングに立った。

 いま仕事は自営に近い形となり、「受けた仕事は何でもやらないと食ってけない」。そのため、練習も夜遅くからになることが多い。

 猪苗代町の実家で母と2人で暮らす。

 「同級生はみんな家庭を持っ…

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