「君がいたから歩み止めなかった」 亡き親友へ、路上で歌う19歳

大滝哲彰
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 《♪君がいたから歩みを止めなかった――。》路上で一人のストリートミュージシャンが歌っていた。曲の名は「歩み」。互いに夢を語り合い、あきらめずに進み続けると誓った親友との思い出を歌詞に編んだ。その親友は2018年3月、急死した。これからも歌い続けていくつもりだという。

 三重県桑名市のパクユナさん(19)は、アコースティックギター1本を抱え、各地のライブハウスや路上で歌っている。昨年春、大学生になってからシンガー・ソングライターとしての活動を本格化させてきた。コロナ禍でステージに立つ機会こそ減っているが、昨夏にはアマチュア対象のオーディションで、5万人を超える応募者の中から、ファイナリスト300人のうちの一人に選ばれたこともあった。

 中学3年の秋の夕暮れ時、親友と互いの夢を打ち明けた。親友はアナウンサー、自分はシンガー・ソングライター。親友は笑って言った。「いつかテレビ番組で共演したいね」

 それぞれ別の高校に進んでからも会っていた。「ユナならなれるよ」。一緒に行ったカラオケで言われた言葉に背中を押された。

 だが18年、親友の訃報(ふほう)が届いた。原因はわからない。事故なのか、自ら命を絶ったのか……。亡くなる数週間前、「学園祭のステージを見に行きたい」と言ってくれていた。

 親友は言っていた。

 「夢を見続けるより、あきらめる方がよっぽど怖い」「たとえ小さくても、芽を紡げば花は咲き誇るから」

 その言葉には、何度も救われた。

 ステージで歌う姿を一度も見せられなかった。今はライブハウスのほか、少人数ながらフェスにも呼ばれるようになり、自信もつきつつある。「約束したとおり、着々と夢に向かって歩み続けているよ」。親友にそう報告するために作った曲が、「歩み」だった。サビの歌詞にはこうつづった。

 ♪君がいたから歩みを止めなかった この足で今日も生きられる やるせないあの日の憂いも全部 明日への強さに変えるように

 君は言ったよね 夢を見続けるより諦める方がよっぽど怖いと だからこの街で君に届くまで いつまでも歌い続けるから

 この曲の時は、親友が目の前にいるつもりで歌う。ライブでは、もらったポーチに思い出の写真やキーホルダーなどを詰めて臨んでいる。

 プロになる決心を固め、今は毎日のように近鉄四日市駅前などの路上にギターを持って立つ。目指している「歌手像」は、自分の歌が街で流れ、人々の日常の一部になること。道のりは大変だとわかっている。でも……。

 「親友の分も、私が夢をかなえるんです」(大滝哲彰)