台湾防衛、「あいまい戦略」見直しの必要なし 日米は長期計画を

聞き手・園田耕司
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 バイデン米政権は中国から外交・軍事的圧力にさらされている台湾への支援を強化している。バイデン政権の台湾支援にはどのような狙いがあるのか。米中問題に詳しい米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・リン上級研究員に聞いた。

――バイデン政権は、台湾が世界保健機関(WHO)など国連機関に「意味のある参加」ができるように支援することを求めています。

 「台湾は新型コロナウイルスパンデミック中であるにもかかわらず、WHOに参加していないため、加盟国と同じ必要な情報を受けることができません。多くの国連機関は、その参加資格を国家に限っているわけではありません。国連機関参加は、台湾にとって政治的・経済的に大きな恩恵があります」

――中国は強く反対しています。実際に台湾が国連機関に参加することは実現可能ですか。

 「それは台湾が幅広い国際的な支援を得られるかにかかっているでしょう。それぞれの国連機関のメンバー国がどの程度、台湾の参加を支持するかどうかによるため、ケース・バイ・ケースだと思います。しかし、米国の立場では、国連機関には国家でなくても参加できるわけであり、台湾は排除されるべきではない、という主張です」

――中国は台湾への圧力を強め続けています。このため、米議会などでは、中国の台湾侵攻時に米国が台湾を防衛する意思があるかどうかを明言しない「あいまい戦略」を見直すべきだ、という意見が強まっています。

 「私は、米国の『あいまい戦略』を見直すべきだとは思いません。なぜなら『あいまい戦略』の見直しが米台双方にメリットがあるかどうかはっきりしないからです。中国はすでに、台湾有事の際、米国が台湾防衛に駆けつけることを想定しています。中国軍のすべての軍事計画が台湾有事における米国の介入を前提として組み立てられているのです。例えば、中国が現在『米国は90%の確率で軍事介入してくる』と考えていることを、95%や100%に高めることに一体何の意味があるのでしょう。逆に中国が自国の軍事力の進展のためにさらなる投資を増やす、という結果を生むだけでしょう」

――4月の日米首脳会談の共同声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言が入りました。岸田政権も台湾支援に力を入れようとしています。

 「米国が明確に理解していることは、米国が台湾防衛に駆けつける際、政治・経済・軍事的に強固な日米関係が必要になるということです。米国の台湾防衛は在日米軍基地から作戦が行われるでしょう。米国は日本に対し、台湾有事をめぐる在日米軍基地の使用について協議を求めるでしょう。米国は日本の自衛隊に対し、軍事作戦を展開している在日米軍基地の防衛を求めるかもしれません。これに加え、米国は日本にもっと積極的な役割を求める可能性もあると思います」

 「一方、留意するべき点は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席は演説で、台湾の『平和統一』を強調していることです。つまり、少なくとも予想できる近い将来、中国の目標は台湾に対して軍事力を用いることではなく、平和的に統一を目指すということです。習氏の言動を見たとき、台湾海峡情勢が来年のうちに極めて悪化するとは思っていません」

――ではなぜ日米は台湾をめぐる危機に備える必要があるのですか?

「米国、そしてこの地域の同盟国・友好国のために、我々は1年間の計画ではなく、長期計画をもつ必要があるからです。最悪の事態に備えた長期計画を持つことは、米国と同盟国・友好国にとってメリットがあるでしょう。軍事計画は常に最悪のシナリオのためにあるものです」(聞き手・園田耕司