「クラブの未来」5分間語った権田、スピーチを見守った社長の思い

照屋健
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 J1清水エスパルスのGK権田修一セレッソ大阪に逆転勝ちした4日の最終節後のセレモニーで、サポーターに語りかけた。

 「最後まで残留争いに巻き込まれ、申し訳なく思います」

 そして、クラブの未来について、と切り出した。

 スピーチは5分近くに及んだ。

 「みなさんが今日、スタジアムで感じたこと、それが僕たちがこれから進む道だと思っています」

 さらに、言葉を続けた。

 「終盤はけが人も多く、監督、クラブはみんなが使いたい選手は使えなかったかもしれない。ただ、サッカーの本質的な部分にこだわって、みんなで残留を決めることができました。絶対に最後まで諦めない姿勢、一人一人が仲間のために走ること、みんながチームのためにやる姿勢、もっと評価してほしいプレーだと思っています」

 権田は前節の浦和戦後、控えDF立田悠悟の練習での貢献を取材に明かした。

 この日、「特定の選手の名前を挙げるのはよくないと思うのですが……」と言いつつ、第3GKの大久保択生の名前を挙げた。

 「今年1年間、同じGKで、1試合も出られなくても、毎日クラブハウスに一番早く来て、僕は、彼が本当に毎日、熱い姿勢で練習していたおかげで、自分の体がしんどくても、彼の顔を見ていると、絶対にもっとがんばらなきゃ、と思わせてもらいました」

 「得点をたくさん取った選手は普段からたくさん拍手をもらっています。今年出場機会はありませんでしたが、ノリエガエリック選手もグラウンドで戦っていました。出ている選手だけでなく、三保(練習場)のトレーニングで頑張っている選手に今年一番の拍手を送ってあげてください」

 その言葉に、寒空の下に残ったサポーターたちから、この日最も大きな拍手がわき起こった。

 残留争いのまっただ中にいる11月の練習後。主将としてチームを引っ張っている自らの取り組みが「クラブの未来につながっているのか?」と報道陣に問われ、「正直、分からないです。最低限、クラブの未来が明るくなるために必要だと思ってやってきたつもり。この先の未来はどうなるかは誰も分からないので」と答えていた。

 最終盤の4試合は3勝1分け。ロティーナ監督の退任後は、ボールを奪う、球際を強く、味方のために走る――。サッカーの本質に立ち戻った。1カ月前は分からなかった未来だったが、最後は自力で残留を決めた。

 実は、この日、ホームゲーム最終戦で恒例の社長スピーチはなかった。

 昨年に就任してから様々な改革に乗り出し、「スポーツ界の半沢直樹」ともいわれる山室晋也社長に理由を聞くと、こう言った。

 「負けたら、責任をとって私がいこうと思っていた。でも、勝ったら選手と監督が主役だから」

 そして、言葉を継いだ。

 「悔しくて、このままじゃ終われないよね」

 3年連続で監督が交代し、今季も低迷したサッカーどころの名門チーム。スピーチの言葉の重みを忘れないでほしい。(照屋健)