<おかしとことば>12月 モノトーンの冬景色 甘みはあたたかく

KANSAI

編集委員・長沢美津子
[PR]

 そぼろ状に裏ごしたあんを、形にするのが和菓子の「きんとん」です。やわらかな口当たりが魅力ですが、あんの色づかいやそぼろの大きさを変化させることで、春は野山を表したり、夏の清流に見立てたり。抽象画の筆のように、見る側にどんな景色も想像させてしまいます。

 赤や黄の紅葉があでやかな秋から一転、冬を告げる漆黒のきんとんの名は「初霜」です。土に霜が降りた、静かな朝を切り取っています。モノトーンの世界観に「厳しい寒さも景色にして楽しむところは、庭の文化に通じます」と、京都府立植物園に勤める樹木医の中井貞さんが教えてくれました。たとえば霜よけの冬支度、菰(こも)巻きです。

 京都の庭に特徴的な南国生まれのソテツは、遠くの珍しいものを手に入れて富と力を示した桃山の頃につながっています。「人間の都合で植物を気候の違う土地に連れてくる。ソテツは霜にあたると枯れてしまう。職人たちに、稲わらを編んだ菰で木を美しく包んで、春が来るまで守る技術が育ちました」

 冬の植物園の見どころを聞くと「自然の循環でしょう」と中井さん。足元の枯れ葉は土にかえり、頭上には越冬する木の芽がふくらむ。自分も循環の中にいるようだと。「葉が茂り、花の咲く時には隠れていた樹木そのものの姿がよくわかります」

 追伸ですが、きんとんの「初霜」の黒あんは、黒砂糖を使っています。南国生まれのコクのある甘みは寒い日の体においしく、気持ちも温かくしてくれました。(編集委員・長沢美津子

12月のおかし

銘 初霜 やわらかな黒糖あんをこし器でそぼろにして粒あんの芯に付ける。霜を表す氷餅は餅生地を凍結乾燥して砕いている。

協力:今西善也 京都祇園町「鍵善良房」15代主人。

#KANSAI

#KANSAI

近畿の魅力を再発見する新企画。社会・経済から文化・スポーツまで、地元愛あふれるコンテンツをお届けします。[記事一覧へ]