ケーキの自販機、希望的観測からの大成功 食品ロスに心を痛めて冷凍

鈴木洋和
[PR]

 パティシエ手仕込みの冷凍ケーキを買える自動販売機が滋賀県草津市にお目見えした。8月末の設置以来、珍しさやおいしさで連日、完売するほどの人気だ。自販機を設置したのはケーキ製造業「Papa―Lab(パパラボ)」社長の大林瑞門(みずと)さん(44)。コロナ禍で下がった売り上げをカバーする心強い存在になっている。

 大林さんは京都市内の調理師専門学校を卒業後、洋菓子店やホテルで活躍した。やりがいを感じる一方、心を込めて作ったお菓子が、売れ残ったら捨てられてしまうことに心を痛めていた。

 2010年、草津市に冷凍ケーキを製造し、主に飲食店向けに販売する「パパラボ」を立ち上げた。大林さんは「冷凍だと食品ロスの機会を大幅に減らせる。経営的にも冷蔵の商品より少人数で効率よく製造し、ストックできる」と冷凍ケーキの利点を説明する。

 解凍するときに状態が変わることを織り込み、レシピを作る。クリームやフルーツの使用に制限があり、色鮮やかな見た目は難しい。その代わり生地の味わいや食感を追求。シンプルながら上質な味わいを心がけている。

 レストランやカフェなどに冷凍ケーキを販売しているが、コロナ禍を受けて閉店したり、外注をやめて自社製造に切り替えたりする取引先が出てきた。全体的に販売量が減り、20年度の売上高は19年度に比べ3~4割減った。

コロナ禍の苦境を受け

 何とかしたいが、新規の取引先を開拓することは、コロナ禍で難しい。悩んでいたとき、東京都内にある会社が製造している冷凍自販機「ど冷えもん」を知り、挑戦することにした。

 あまり前例が無い事業なのでとても不安だった。大林さんは「例えば大手のコンビニやチェーン店ならきちんとマーケティングをして設置するが、うちは家族経営。希望的観測だけだった」と振り返る。

 しかし、8月26日に設置すると、メディアに取り上げられたこともあり、予想の何倍もの反響と売れ行きとなった。自販機の1日の販売量は約100箱。8~10月は午前9時に販売を始め、9月は昼、10月も夕方には売り切れた。

 商品は全て2個入り税込み500円。ロールケーキやタルト、チーズケーキ、ガトーショコラなど9種類を売り、うち4種類は季節限定。残り5種類も必要に応じて入れ替える。

 販売時間は従来午前9時から午後7時までだったが、好調のため11月22日から週4日は24時間営業にした。月曜午前9時に販売を始め、火曜から金曜まで24時間営業で、土曜の午後3時に休止する。日曜・祝日は定休日。ケーキの補充は日中、不定期にするため、売り切れとなる時間帯もある。

 大林さんは「ケーキは特別な日のもの、というイメージがあるが、価格を抑えているので『普段使い』をしてほしい。冷凍なので遠くから買いに来てもらうものでもない。地元に末永く根付きたい」と話している。

 自販機はJR草津駅から歩いて10分ほどのところ、草津市渋川2丁目7の27に設置されている。(鈴木洋和)