深いこくとうまみ 愛媛県産原料にこだわった小京都の醬油

長田豊
【動画】愛媛県大洲市「梶田商店」の巽醬油=長田豊撮影
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 石川県北部の七尾市で勤務していた15年ほど前、昔ながらの製法で丁寧に手造りされた醬油(しょうゆ)のうまさと、造り手の顔が見える喜びを知った。以来、山陰や四国に転勤後も取り寄せて愛用してきた。今春、転勤してきた愛媛県にもうまい醬油があると聞き、秋口にようやく醸造元を訪ねた。

 向かったのは愛媛県南部の大洲市。2004年に天守が復元された大洲城や、明治期の豪商が建てた別荘の臥龍山荘が肱川沿いに立ち、「伊予の小京都」とも呼ばれる。

 「梶田商店」の梶田泰嗣(やすつぐ)社長(47)が迎えてくれた。店は梶田家の8代目が1874(明治7)年に現在地で創業して150年近く経つ。ただ、8代目の日記には「代々醬油屋を営む」と記されている。

 13代目の梶田さんは昨年1月、父親から社長を引き継いだ。県内産の大豆と麦だけを使い、ここ10年ほどで県外を中心に根強いファンを獲得した「巽(たつみ)醬油」の味は、梶田さんが約20年前に帰郷後、試行錯誤しながら育ててきた。

 大学で醸造を学んだが、家業を継ぐ気はなく、卒業後は大手スーパーに入社。食品などの売り場を任され、5年勤務して昇進の打診も受けたが、品質より価格が重視されることに疑問を抱くようにもなった。休暇をとって帰郷した際、退職して醬油造りに取り組むことを決めた。

 3年がかりで発売にこぎつけたのが、丸大豆を使い、無添加で天然醸造の濃口(こいくち)だ。こくが深く、うまみがよく伸びる。祖父の代から蔵にある分析室と、長年の経験に裏打ちされた父の技術力に助けられたという。

 当初、地元ではまったく売れなかったが、約3カ月後、人づてに東京の小売店で取り扱ってもらえるようになった。次第にプロの料理人からも評価されるようになり、全国各地や海外に販路が広がった。

 香りがよく塩分は控えめな淡口(うすくち)、農薬と化学肥料不使用の原料で造った「晃(ひかり)」などが加わり、丸大豆・無添加の醬油は現在5種類。「それぞれアミノ酸の量などが違う。好みに合う醬油を探してほしい」と梶田さんは言う。次は、麦を使わず大豆だけで造ったグルテンフリーのたまり醬油にも挑戦するつもりだ。

 「これからも良い食、良い体につながる食品を作り続けていきたい」

 梶田商店の醬油がうまいと教えてくれたのは、四国中央市にある「まなべ商店」。高知出身の眞鍋久美さん(44)が四国各地のお薦めの食品を扱うセレクトショップだ。

 「梶田さんの醬油は普段の料理に少し使うだけで味が決まる。瀬戸内の食材にもよくなじむ」と眞鍋さん。「年によって大豆も麦も出来や収量が違うはずだが、妥協せず県産原料だけで造り続けている。農業や愛媛の食を支えようとする姿勢が素晴らしい」(長田豊)

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 梶田商店 愛媛県大洲市中村559。電話0893・24・2021。地元向けに店頭販売も行っているが、ネット通販サイト(https://www.kazita.jp/shop/別ウインドウで開きます)でも購入可能。公式サイトで詳しい商品説明や全国の取扱店も紹介している。天然醸造の丸大豆醬油5種に加え、麦みそも人気がある。