入ったヤドカリは二度と出られない 人のごみが引き起こす幽霊漁業

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矢田文
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 海に残された漁具などが、生き物に深刻な危害を与える「ゴーストフィッシング(幽霊漁業)」。この現象は、意外な「ごみ」でも起きていることが最近分かってきた。

 海洋に投棄された廃タイヤが、何匹ものヤドカリを殺し続けている――。弘前大(青森県)のチームが10月、こんな研究成果を発表した。調査のきっかけは、同大の曽我部篤准教授が、投棄されたタイヤの内側に、巻き貝の殻やヤドカリが多く存在していることに気づいたことに始まる。

 六つのタイヤを海中に置いて実験したところ、1年間で計1278匹のヤドカリがタイヤの内側に侵入した。さらに、ヤドカリのタイヤの内と外との移動について調べると、外から内側に侵入したヤドカリはいるのに、内側から外に出られたヤドカリは1匹もいないことがわかった。

 内側から外に出ようとすると、タイヤの内面に沿って移動する必要がある。だが、タイヤ内面は反り返った構造を持つため、ネズミ返しのように働き、一度侵入してしまうとヤドカリが二度と外に出られない環境を作り出したとみられる。

 タイヤの内側に閉じ込められたヤドカリの多くは殻が破損していた。ヤドカリは成長とともに体の大きさにあった殻に引っ越しを重ねていく必要がある。曽我部准教授は、「タイヤ内という資源の乏しい環境下で、殻の奪い合い、あるいはエサを求めて共食いのようなことが起きていたのではないか」と考える。

 ヤドカリは海の掃除屋とも言われ、水や砂を浄化し、生態系を支えている。一方で海の清掃活動などで廃タイヤが見つかることは今も多い。一つ一つのタイヤが与える悪影響はわからないが、曽我部准教授は「無視はできない」と対策の必要性を訴える。

 論文は、英国王立協会の科学誌に掲載された(https://doi.org/10.1098/rsos.210166別ウインドウで開きます)。

 廃タイヤとヤドカリのような…

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