判決ではない「本当の区切り」に いじめ自死、学校側から謝罪なく

堀越理菜
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 いじめを受け、2013年に自ら命を絶った熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)の母親(54)が5日、これまでの8年間と現在の思いを支援者に伝える報告会を熊本市内で開いた。母親は、裁判で県の賠償責任が認められた後、学校関係者から謝罪はないと明かし、「ものすごく悲しい」と語った。

 生徒は13年4月に県立高校に入学し、付属の寮に入った。そこで同級生から、脅迫的なLINE(ライン)のメッセージを送られるなどした。夏休みで帰省中の同年8月、実家で自殺した。

 遺族は16年、元同級生1人と県に損害賠償を求めて熊本地裁に提訴。19年の地裁判決は元同級生にのみ支払いを命じた。20年の福岡高裁判決は「いじめへの不適切な対応で、生徒は精神的苦痛を受けた」などとして、県に220万円の支払いを命じ、確定した。

 5日の報告会で、母親は「事実を明らかにするには裁判という形を取るしかなかった」と話した。裁判では県側が、家庭に問題があったなどの主張もしたといい、「勝手に娘の人物像を作り上げていたことが、あまりにもかわいそうで悲しかった」と振り返った。

 判決の後、当時の担任や寮の舎監長、校長との面会を弁護士を通じて県教委に要望したが、かなっていないという。「娘に手を合わせる心で謝罪してもらうことが、本当の一つの区切りだと思っている。これではいじめも学校の対応も何も変わらない」と話した。そして、「失った娘はどんなことをしても取り戻せないが、謝罪は私たち家族にとって、とても大切なことだった。それができない理由を教えてください」と訴えた。

県教委「公務員個人の責任ではなく組織として対応」

 一審で意見書を出した、いじめ問題に詳しい立命館大大学院の春日井敏之教授(臨床教育学)は報告会で、「本来なら助かる命が救えなかった。子どもたちのトラブルを丁寧に解きほぐして解決を図る努力をすべきなのに、逆に追いやってしまったことが無念でならない」と話した。

 学校の不適切な対応は、いじめている子どもの指導や支援の機会を失することにもなると指摘。いじめの認知などは学校が組織として対応しなければいけないと強調した。また、再発防止策は教育委員会任せにせず、知事などの首長が率先して示すことも大事だと述べた。

 県教委学校安全・安心推進課の坂本一博・審議員は取材に、遺族が望む学校側との面会がなされていないことについて、「公務員個人の責任ではなく学校組織としての対応の責任が問われたものと認識しているため、(遺族の要望には)県教委として対応したい」と説明した。当時の校長ら教員3人も、面会を辞退したい旨の意向を示したという。

 二審判決後、当時の担任と舎監長には、現在所属する学校の校長を通じて判決文を渡し、校長が再発防止に向けた助言をしたという。定年退職した当時の校長にも口頭で内容を伝えたという。県教委として再発防止に向けた取り組みを進めているという。(堀越理菜)