値上げ影響「Xマスやおせちは大丈夫でも…」 Jフロント社長の心配
緊急事態宣言が終わり、百貨店に客足は戻ってきているのか、消費動向に変化はあるのか。大丸や松坂屋を営むJフロントリテイリングの好本達也社長に聞いた。
10月以降、政府や自治体が、経済を動かすんだ、と言ってくれています。この2年間、我々も感染対策として販売促進策を限定されていましたが、11月以降は本気でできています。
ただコロナ前の水準に戻るかというと、戻っていません。訪日客のシェアが10%ありました。訪日客が回復しないと、本格的な回復とは言いにくいですね。訪日客の8割は中国のお客さんでした。中国は隔離などを徹底しています。欧米の感染も増えています。訪日客が戻るのは早くても22年後半からだとみています。
国内の消費動向をみると、時計などの高級品は好調です。ただ、コロナでお客さんのライフスタイルは変わってしまいました。たとえば在宅勤務の普及などで、スーツは1着買ったらもういいよね、という人が増えています。婦人服や紳士服をどうしていくか考えないといけません。アパレルをめぐっては環境や人権の問題も見過ごせません。
懸念材料の一つは原油高をはじめとする様々な物価の上昇です。我々のビジネスにも影響が出始めています。
経験則で言えば、高級品は値上げしてもお客さんがついてきてくれます。クリスマスケーキやおせち料理も、1年に1回のことなので高くても買う人はいるでしょう。ただデパ地下の総菜の値上げだと、どこかで買わなくなると思います。
衣料品は供給の問題もあり、より複雑です。輸送コストがさまざまなところで絡んできます。緊急事態宣言が解除されて、コロナ禍で失ったものを取り戻すということでは、いまはプラスの局面だと思っていますが、それにブレーキがかかるのでは、と懸念しています。(聞き手・木村聡史)