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対象広がる「植え込み型」の補助人工心臓 移植候補になれない人にも

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野口憲太
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 重症心不全の患者の心臓に装着し、血液の循環を助ける「植え込み型補助人工心臓」。これまでは、心臓移植の候補者につける場合のみ公的医療保険の対象だった。5月からは、がん治療歴や高齢などの理由で移植の候補者になれない人にも対象が広がった。装着後のサポート体制の充実など課題もみえてきた。

抗がん剤の副作用で心不全に 公的保険の対象外だった「植え込み」

 2018年、山梨県に住む村本彩さん(47)は乳がんと診断されて、がんを切除した。抗がん剤で治療中にごくまれな副作用で重い心不全になった。入院して強心剤の点滴などで治療を受けたが、自宅に帰ることは難しく、状態が良くなっても、入退院を繰り返す可能性が高かった。心臓移植が必要になったが、がんの寛解から5年は移植の候補になれないルールがある。

 そんなとき主治医から、移植の候補になれない人を対象にした植え込み型補助人工心臓の臨床試験を打診され、参加を決めた。当時は、待機期間が長期に及ぶ移植の候補者にしか公的医療保険が適用されなかった。保険外だと、手術費だけでも数千万円はかかる。

 19年5月、重さ140グラムで手のひらサイズの小型ポンプを心臓の下部に穴を開けて装着する手術を受けた。介助人となる夫の真洋さん(42)らと一緒に、機器の扱い方や緊急時の対応方法を学んで7月に退院。いまは在宅で仕事もしている。

血栓リスクや生活制限… それでも「家族と一緒に暮らせる幸せ」

 血栓症や感染リスクはゼロではなく、車の運転は禁止、入浴はシャワーだけ。緊急時に対応する介助人(村本さんの場合は夫と近くに住む父)の存在も不可欠だ。それでも、「この家に自分の足で帰ってこられて、家族と一緒に暮らせる。家族に負担がかかり複雑ですが、それを飛び越える幸せがあります」。

 保険の対象が移植候補者に限られてきたのは、機器が原因で血栓症など命に直結するリスクもあるためだ。村本さんのようにがん治療直後の人や、「65歳未満が望ましい」とされる移植の適応年齢を超えた人は事実上の対象外で、薬物治療や冷蔵庫のような大きさの機器とつながった体外式の補助人工心臓を使うしかなく、長期の入院がほぼ必須だった。

 だが、ポンプの小型化や構造…

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