復活した「いぶりがっこ」向け大根、東京でも好評 「物語性感じた」

浜田奈美
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 一度は栽培が途絶えながら3年前に復活した秋田の伝統野菜「沼山大根」が、東京都内で1カ月間、販売された。農家の思いを伝えるドキュメンタリー映画の上映会も開かれ、生産者が伝統的なものづくりへの思いを語った。

 沼山大根は、秋田県横手市沼山地区でさかんに作られていた在来種だ。通常の大根より実が詰まり、味が濃いため、秋田名物「いぶりがっこ」に最適と言われる。生産者が高齢化し、2000年代初めから栽培が途絶えていた。

 復活させたのは、大仙市無農薬農業を営む田口康平さん(38)ら、県内の3組の農家。田口さんが数年前、盛岡市の農家から「秋田にはうまい大根がある」と聞き、秋田県農業試験場の協力を得て、18年から栽培してきた。20年には県の「あきた伝統野菜」にも選ばれた。

 生活雑貨店「無印良品」を運営する「良品計画」は、地方の農家と都市をつなぐため、旗艦店の青果売り場で個性的な農産物を売っている。沼山大根は11月5日から1カ月間、銀座店と有明店で販売した。企画を統括した食品部事業開発担当部長の見市信さん(48)は「農産物は完売が難しいが、順調に販売が進んだ。好評です」。秋田出身者のほか、「飲食店で食べておいしかった」と買い求めた客もいたという。

 見市さんは今年春に沼山大根の畑を訪れ、「野菜と作り手それぞれに、消費者に伝えるべき物語性を感じた」という。

 今月2日には、田口さんたちの取り組みを半年かけて追った映画「沼山からの贈りもの」を銀座店で上映した。映画は国際教養大学の学生たちが制作した。田口さんは上映会で「伝統を継承する重みを痛感している。重みに負けずに土の上に立ち続け、沼山大根という伝統を次につなげたい」と語った。(浜田奈美)