「こんな非常時に…」白い目向けられた芸大生 守った「敵国」の彫刻

有料会員記事

中村尚徳
[PR]

声なき遺言 画学生と戦争:2

 【栃木】東京芸術大学東京都台東区)の敷地内にオーギュスト・ロダンの「青銅時代」が立っている。

 戦時下、仏人彫刻家の出世作が撤去されそうになった。その「事件」を大学百年史が伝えている。

 陸軍の配属将校が、作者は敵国の人間だと強権を振るおうとした。学生たちは抵抗し、かろうじて食い止めた。しかし、軍国主義の不条理が学内を侵しつつあった。

 そんな時代、伊澤洋は前身の東京美術学校に入学した。1939年、国家総動員法が施行され、生活の隅々までをがんじがらめに縛り始めた翌年だった。伊澤より1年早く入学した100歳の画家、野見山暁治(ぎょうじ)さんは回想する。

 「世の中は次の戦争にぐんぐん向かい、行き先が決まっているような雰囲気だった。いまに世界を相手に戦うことになる、そんな予感があった」

 若者は次々に戦地に駆り出された。ただ、大学生や専門学校生らは卒業まで徴兵が猶予された。野見山さんは美術学校生に対する世間の冷ややかな目を感じた、と言う。

 大半の学生は親の反対を押し切って入学していた。入学後に仕送りを止められた同級生もいた。野見山さんの父親も「お前、こんな非常時に何を考えているのか」と、いい顔をしなかったという。

 秋恒例の芸術祭開催も、校長…

この記事は有料会員記事です。残り634文字有料会員になると続きをお読みいただけます。