憤る編集者「正直者が馬鹿を見た」 「羅生門」載せた教科書の波紋

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伊藤和行 編集委員・氏岡真弓
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 今年3月に公表された高校の国語教科書の検定結果をめぐり、各教科書会社が文部科学省を批判する異例の事態が続いている。発端は、ある1社の教科書が検定に合格したこと。その後、この教科書が全国の多くの高校で採用されることになり、各社の不満がさらに高まっている。

 この教科書は、来年度から高校国語に新設される科目「現代の国語」用に、第一学習社(広島市)が作った4種類の教科書のうちの一つ。小説5作品を載せているのが特徴だ。

 文科省が8日に公表した教科書の採用状況によると、この教科書は全国で19万6493冊使われる予定で、シェアは16・9%。「現代の国語」用の8社の教科書計17点のなかで、最大手の東京書籍版(18万3714冊、シェア15・8%)を抑えて最多だった。

 現行の科目「国語総合」の採用状況をみると、今年度最も多く使われているのは東京書籍版で約17万7千冊(シェア14・6%)。第一学習社版の各教科書は冊数では3位以下だったが、今回、同社が首位の座を奪った。

他社から悲痛な訴え続出

 第一学習社版がトップだという情報は、先月の時点で業界に広まっていた。

 「『検定、間違ってました』…

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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2021年12月9日9時56分 投稿
    【提案】

    この事例について高校生に次のような問題を解かせてはいかがでしょうか。 「現代の国語」は実用的な文章を重んじる科目で評論や法令、企画書などを扱います。「言語文化」で学習するはずの小説を載せた教科書が、文科省の検定に「現代の国語」の教科書とし

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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2021年12月9日17時41分 投稿
    【視点】

    第一学習社の教科書が検定をパスしてしまったのは不可解で、他社が「だったらうちだって小説を載せたかった」と憤るのはもっともだ。なぜこのような事態になったのか、そしてこの事態を文部科学省がどう収集するのか、私には見当がつかない。 一方、記事中

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