「極右では勝てないのでは?」急浮上のフランス大統領選候補に尋ねた
「ゼムールのミーティングに行くのかい? 乗ってきなよ」
振り向くと、濃紺のプジョーが速度を落として私に近づいていた。後部座席から若い男性が身を乗り出し、中へと招いている。
フランス大統領選に立候補した極右の論客、エリック・ゼムール氏(63)。フランス社会の右傾化と分断を体現し、今最も物議を醸す人物だ。私は彼が現れる集会を目指し、ひとけのないフランス中部の田舎道を歩いていた。
11月初旬。日は傾き、傍らの畑にはプジョーの長い影が伸びている。中には若者の男女が4人。「いいかな?」と聞くと、喜んで後部座席を詰めてくれた。ゼムール氏が集会を開いたのは、仏中部リヨン郊外のシャルビューシャバニュー。空き店舗が目立つ、人口約9千人の少しさみしい街だ。
世論調査でマクロン氏につぐ2~3番手
ゼムール氏は保守系新聞「フィガロ」などにコラムを書き、テレビではコメンテーターとして出演を重ねてきた。パリ郊外出身で、アルジェリア系ユダヤ人の家庭に育った。2014年に出版した「フランスの自殺」は、エリート支配、欧州連合(EU)の官僚、同性愛者のロビー活動などによってフランスの国力が弱まったと主張。ベストセラーとなった。テレビ番組での発言が人種や宗教の憎悪をあおったとして、罰金刑を受けたこともある。「イスラム教徒による、フランス人の大いなる(民族的)置き換えが起きている」「フランスは衰退した。フランスはもはやフランスではなくなった」などと公言している。
反発も強く、遊説先を歩けば、決まって「帰れ!」などと地元住民のブーイングを浴びる。それでいて、来年4月の大統領選の世論調査で、マクロン大統領についで2~3番手につける結果が今秋相次いだ。
「おれたちトゥーロンから来たんだ。フランスの南端だよ。朝5時に起きて半日かけてやってきたんだ。君もゼムールの支持者かい?」と私に声をかけた若者(28)は話した。
「実は日本の新聞記者なんだ…