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AED使えば、1カ月後の社会復帰4割超 1分で10%下がる救命率

後藤一也
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 総務省消防庁によると、人の目の前で、心臓の病気が原因で心停止になる人は、年間に約2万6千人いる。心臓のリズムを電気ショックで元に戻す自動体外式除細動器(AED)を使ったことで、助かった事例も少なくない。

 2004年の厚生労働省通知で、医療従事者でなくてもAEDを使えるようになり、街のあちこちで見かけるようになった。設置に関する法律はないが、自治体が独自に条例を定めたり、企業が自主的に設置を進めたりしたことで、全国に約60万台が置かれている。専門家によると、世界トップクラスの数という。

 その場にいた人がAEDを使った場合、倒れた人が1カ月後に社会復帰できる割合は46%にもなる。心臓マッサージをしなかった場合の4%を大きく上回る。

 ただ、AEDが使われるのは、倒れた人の約5%にとどまる。10年は3%で、少しずつ使われるようにはなったが、大きく伸びないのはなぜなのか。

 救急車が到着するまで、平均で8分。AEDを取りに行ったけれど、救急車の方が早く着いた、あるいはその場にいたのが1人で取りに行けなかった。「どこにあるかわからなかった」ということも多いだろう。学校などでは土日や夜間は鍵が閉まっていて、AEDがあるのに使えないこともある。

 取材した中で、「AEDは持ってきたけれど、使うことをためらった」という事例もある。京都府の柘植彩さん(47)は8年前、マラソン大会で倒れたが、「女性だから」という理由でAEDが使われなかった。AEDを使う際には原則として服を脱がせるため、女性に使うことをためらう人もいる。

 冬場は市民マラソンの大会が盛んだが、心臓発作も増える。夫の知彦さん(54)は「大会の主催者はホームページなどで、AEDの設置台数や救護態勢を明確に示して欲しい」と話す。また「小学生のうちから繰り返し、何度も講習会を受けることで、AEDに関する正しい知識を持ってもらえる」と考え、地元の学校に救命講習会の開催を訴え続けている。

 救命措置を何もとらなければ、救命率は1分につき10%下がる。職場や通勤路でAEDがどこにあるのか、どう使えばいいのか、改めて確認したい。(後藤一也)