エキニシ「あかり消さない」 火災から1カ月、再生へCF

戸田和敬
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 JR広島駅西側の飲食店街、通称「エキニシ」で27棟が焼け、2人がけがをした火災から10日で1カ月。被災した店舗の再開が見通せない中、店主らによる自治会クラウドファンディング(CF)を活用して再生への一歩を踏み出す。

 「最初は信じられなかった」。寺本裕治さん(38)は火災翌日に店内に入ったときのショックを振り返る。韓国料理店「カジュアルコリアン マシッタ」の店主。1階は土壁から染み出た泥水が滴り落ち、2階はすすが床を覆っていた。倉庫として使っていた3階も焼け落ちていた。

 エキニシは戦後の復興事業で木造のバラックが立ち並んだ地域で、現在は飲食店など約100店が軒を連ねる。「客と従業員の距離が近い雰囲気が好きだった」。広島市中心部の飲食店で働いていた寺本さんがエキニシに店を構えたのは2018年。週末は深夜まで客が絶えなかった。

 火災が襲ったのは、コロナ禍による県の時短要請が解除され、活気が戻り始めた矢先のことだった。近隣の店主や常連客らが連日、寺本さんの店の片付けを手伝ってくれた。SNSには励ましのメッセージがたくさん届く。営業再開の見通しは立たないが、「この人たちのためにも、あかりを消すわけにはいかない」。

 店主らによる駅西商業センター自治会によると、12店舗がいまも休業を余儀なくされている。広島市南消防署によると、今回の火災ではエキニシの9区画のうち南西の1区画の焼損が激しく、13日には解体工事の準備が始まる。これに合わせ、自治会は防火体制の強化に向けてCFのサイト「CAMPFIRE」で15日から資金を募る。300万円を目標とし、大型消火器や火災報知機を新たに設置したい考えだ。

 自治会の本多琢磨副会長(34)は「昭和のレトロ街の情緒を残しつつ、防火設備を整えて、再生したエキニシを広島の観光地にしたい」と話す。

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 県警や広島市南消防署によると、けがをした60代の男性と80代の母親の2人が住んでいた1階の部屋が火元とみられる。室内は焼損が激しいため出火原因の特定に時間がかかっているという。(戸田和敬)