義手・義足で人生強く前に 「切断ヴィーナス」写真展
「義手」や「義足」を使うパラアスリートやファッションモデルを被写体とした写真展「パラアスリートと切断ヴィーナス」が、横浜市栄区の神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)で開かれている。障害者が強く前を向く姿勢から、何かを感じ取って欲しいというのがねらいだ。
撮影した写真家の越智貴雄さん(42)は、2000年のシドニー五輪・パラリンピックで健常者に肉薄するパラ選手の活躍に目を見張り撮影にのめり込んだ。
「パラの撮影に着手する前は、障害者は福祉で支援する存在という認識でしかなかった。知らないということがどれだけ間違った価値観や偏見、差別を生むかを思い知らされた」と越智さん。会場では、今夏の東京パラを中心に、車いすバスケットボールや水泳などに挑む障害者の活躍ぶりを写した14点を展示する。
パラの撮影を通じ、肉体と義肢の一体化に魅力を感じるようになったという。12年からは義肢装具士らの協力を得て、障害者をモデルとした写真を撮り続けてきた。義肢と独創的な衣装を身にまとう女性らを被写体とした34点も展示する。
越智さんは被写体の女性を「切断ヴィーナス」と名付け、写真集やファッションショーも企画してきた。女性にスポットを当てたのは、義肢を隠す人が男性より多いと義肢装具士から聞いたためという。
「撮影に至った方は義肢をおしゃれのツールに昇華させ、人生を謳歌(おうか)している。そんな生き様と表現には希望がある」と越智さん。近年は芸術的な作品とともに、被写体の障害者が切断や障害のため手足が失われている部分もあえて強調して撮影し、「自分らしさ」をすべて表現する手法も始めている。
15年から始めたファッションショーはすでに15回に達し、障害者からの撮影希望も多く寄せられている。越智さんは「義肢や障害者のことをより広く知ってもらうため、世界に向けて発信していきたい」と話す。
展示はあーすぷらざ2階の展示コーナーで26日まで。午前9時~午後5時、入場無料。12日午後2時から、越智さんと、「切断ヴィーナス」の1人で東京パラの開会式にも出たダンサーのキャロットyoshieさんが登壇する参加費無料のシンポジウム「共生社会と多様性を考える」がある。同館プラザホールが会場で、ウェブサイト(https://www.earthplaza.jp/event/20211212kyouseikosei/)での申し込みが必要。問い合わせは同館(045・896・2121)へ。(岩堀滋)
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デスクとして、記者が書いた原稿にどこまで手を入れるべきか、常に悩む。誤字脱字はもちろん正すし、事実関係に疑義があれば記者に確認する。だが原稿からにじむ視点や価値観は記者のものだ。原稿の視点や価値観は妥当か、しばしば考え込む。 この記事
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