来春から暮らしと税はこう変わる ローン減税の控除率減は「改悪」?

伊沢友之
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税制改正こうなった①暮らし編

 来年度の税制改正に向けた自民、公明両党の大綱が10日にまとまりました。「成長と分配の好循環」を掲げる岸田文雄首相の意向に沿って、企業の賃上げを促す優遇措置の拡充や、住宅ローン減税の延長などが決まりました。暮らしに関係する税制は今後どのように変わるのでしょうか。

 決まった大綱は政府側に渡され、12月中に政府税制改正大綱として閣議決定されます。来年1月に始まる通常国会には、それぞれの制度改正に必要な法案が提出され、成立すると実行に移されます。

 今回は、10月に発足した岸田政権で初めての税制改正でした。ただ、今年は9月に自民党総裁選、10月に衆院選を行ったため、例年は10月後半から始まる自民、公明の関係議員らがそれぞれつくる「税制調査会」の始動は約1カ月遅れの11月後半からでした。

 さらに、さまざまな税制の決定権をにぎる「インナー」と呼ばれる自民の税調幹部は、衆院選に伴う引退や落選、入閣などで、9人中7人が交代。新しく選ばれた5人と再任の1人がインナーに加わり、体制が整ったのも始動の直前でした。議論の時間が限られたなかで、今年の改正メニューは全体的には小粒なものにとどまりました。

住宅ローン減税、中間層は恩恵増?

 個人向けで今年、注目が大きかったのは住宅ローン減税でした。住宅は値の張る買い物ですし、国内の産業に幅広い影響を与えることもあります。

 新型コロナ対応でつくった一部の特例を除き、いまの制度は2021年末までの入居が期限でしたが、今回の税制改正で25年末の入居まで4年間、延長されました。

 住宅ローン減税は、年末時点のローン残高の一定割合を所得税と住民税から差し引く制度ですが、この割合(控除率)はいまの1%から新制度では0・7%に引き下げられます。

 これは住宅ローン金利でも1%を切るような超低金利が続くなかで、支払う金利の額より、差し引く税額が大きくなる「逆ざや」が起きていたことが背景にあります。本来借りる必要がない規模のローンが組まれ、前倒し返済の意欲がそがれているなどとして、会計検査院が見直しを求めていました。

 一方で、恩恵が受けられる期間は新築で10年から13年に伸びました。計算上ではいまの1%×10年と比べて、新制度の0・7%×13年だと恩恵は減りますが、政府は「中低所得層が実際に手にする恩恵は増える」と説明しています。そのからくりはこの記事で説明しています。

 また、住宅の省エネ性能に応じて、控除額の上限を新築で4段階に、中古で2段階に分け、脱炭素社会に向けた政府の取り組みと歩調を合わせたのも今回の特徴です。

 3年に1度、土地の評価額を見直し、支払う税金の額も変わる固定資産税では、コロナ禍で苦しむ個人や企業の負担増を避けようと21年度に1年限定で、評価額が上がっても税額を据え置く特例が導入されていました。この特例は、住宅地では予定通りに終了することになりました。商業地はもう1年延長されます。その経緯や中身は、この記事で詳しく報じています。

 お酒に関係する見直しもありました。沖縄県内でつくられ、販売される泡盛とビールの酒税を軽くしている措置は、沖縄返還後から続いていましたが、段階的な廃止が決まりました。

 ウイスキーなどと間違えないための規制をなくし、国産のスピリッツ(ジンやウォッカなど)でも、たる熟成の色がついた商品が販売できるようにする見直しもありました。

 記事では紹介できる項目は限られていますが、今回まとまった与党税制大綱は100ページ以上もあり、経済や暮らしの様々な分野に及んでいます。そのなかには、自動車重量税をクレジットカードで納付できるようにする制度の改正や、コロナ禍で生活が苦しい人の借金が年50万円を超えて免除されても、超過分を課税の対象にはしないというものもあります。(伊沢友之)