中国製品の変な日本語、どう思う? 上海の学生が調べて気づいたこと

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 第16、17回の「中国人の日本語作文コンクール」(主催・日本僑報社、メディアパートナー・朝日新聞社)の表彰式が10日、オンラインで開かれた。各回の最優秀賞(日本大使賞)に選ばれた大連外国語大学の万園華さんと復旦大学の潘暁琦さんらが表彰された。

 2005年以降、中国の学校で日本語を学ぶ学生を対象に毎年募集しており、「ポストコロナの日中交流」をテーマにした今年は3198作品の応募があった。表彰式は新型コロナウイルスの影響で2年ぶりに開かれ、昨年の第16回のコンクールの受賞者も合わせて表彰された。

 第16回でコロナ下の日本の対中支援について思いをつづった万さんは、「私たち一人ひとりの力が中国と日本との友好交流を推し進めるために重要になる」とスピーチした。

 今年の第17回で、上海の看板や商品で見かけるおかしな日本語を調べて日本人に聞き取りをした経験をつづった潘さんは「会って話を聞いてみないと分からないことがある。日中交流もそうであってほしい」と語った。

 各回の受賞作を集めた作品集は日本僑報社から発売されている。詳しくは同社のサイト(http://duan.jp/jp/別ウインドウで開きます)まで。

潘さんの作文「対面でしか得られないものを求め続けたい」

 近年、中国メーカーから発売された製品のパッケージに日本語がよく使われている。日本語を使う目的や表現の誤りなどが気になり、ゼミで研究テーマにした。

 スーパーやコンビニで集めた商品のパッケージを調べたら、日本語が間違っているものはなんと70パーセント近くあった。ネットでも、中国で見つけた変な日本語を投稿し続けている日本人がいるし、「意味不明」という困惑や嘲(あざけ)りの記事も相次ぐ。

 それに基づき、「誤りが多い。日本人駐在員や観光客に悪い印象を与えかねない」とまとめて、リポートを提出した。すると、先生から「それは実際に会って聞いてみないと」との指摘を受けた。

 なるほどその通りだ。そこでネットでインタビューに協力いただける上海在住の日本人の方を募集し、実際に会って話を聞くことにした。

 二月上旬の上海では感染はほぼ終息し、新規感染者ゼロの日が何日も続いたおかげで、インタビューは何とか対面で行うことができた。

 一人目へのインタビューの日がやってきた。待ち合わせ場所のスターバックスに着き、真ん中の席に座って待った。しばらくして、日本人らしい中年男性が入ってきた。小さい声であいさつしてみたら、「こんにちは!」とよく響く声で返してくれて一安心。

 さっそく質問を始めた。

 「パッケージに日本語が書いてある中国メーカーの商品を見たことがありますか」「はい、よく見ます」「日本語の間違いを見かけたことがありますか」「何度も」「その割合は?」「ええと。五回に四回ぐらいはおかしいですね」「それを見た時の感想を聞かせていただけますか」「楽しんでます」

 意外な答えだったが、すかさず聞いてみた。

 「へえ、不満やいらだちは覚えませんでしたか」「いやあ、やっぱり語学って難しいから。私も中国語あまり喋(しゃべ)れないし。中国の人がどういう間違いをしちゃうかって分かってくると面白いし、勉強になるから。完全に百点満点の日本語になったら、少し寂しいなあ」

 実際に会って聞いてみないと聞けなかった話だ。次のインタビューではどんな答えが聞けるか、期待が高まった。

 全部で六人に話を聞くことができた。「私は買わない。正しい日本語にしてほしい」と素直に打ち明けてくれた人もいれば、「日本でも昔は街中に変な英語ばっかり。これからよくなるよ」と理解を示してくれた人もいる。どれも予想すらしなかった貴重な本音だった。

 アンケートで自分が想像した回答から選んでもらうのではなく、会って直接話を聞いて本当によかった。そしてオンラインではなく、実際に対面することで、みなさんの暖かい眼差(まなざ)しも心に残った。

 コロナ禍以来、講義も会議も何でもオンラインで行われるようになった。パソコン一台で世界のどこにでもつながるのだ。だが、私はどうも満足できなかった。相手の雰囲気が感じられない。こちらの顔も覚えてもらえない。真意が伝わったのかも心配だ。話が盛り上がっても、終わった後みんなで一杯という楽しみもない。

 上海では今、会いたい人に簡単に会えないような時期は過ぎた。週末にまた日本人の友だちと会って互いのことばを学び合うことができるようになった。私は毎週それをとても楽しみにしている。

 その日の気分に合った服を着て、ワクワクしながら会いに行く。街角のカフェでコーヒーの香りに包まれながら、様々なことを語り合う。汚染水の処理、ワクチンは打ったかなどについて、マスコミの情報やテレビの報道のように一方的にもたらされるのではなく、生身の人間ならではの気持ちや本音をぶつけ合うことができる。

 会って話を聞いてみないと分からないことがある。対面でしか得られないものがある。目の前の相手を五感すべてで感じ取り、その場の空気を共有して初めて生まれる理解がある。私はそれを求め続けたい。日中交流もずっとこうあってほしい。

 だから、祈る。一日も早いコロナ禍の終息を。海を越えて桜の下で語り合う日が待ち遠しい。

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    古谷浩一
    (朝日新聞論説委員=中国政治、日中)
    2021年12月11日9時10分 投稿

    【視点】 中国で日本語を勉強している人は100万人に上るといわれてきた。人口が多いから当たり前だと言われればそれまでだが、中国は世界最大の日本語学習国である。  その中国で日本語を勉強する若者たちに広く知られ、かつ最も権威があると言われるのが、こ