「鬼滅」だけでない コロナで活況の出版業界で今も売れる「紙の本」

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三橋麻子
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メディア空間考 三橋麻子

 コロナ禍で進むデジタル化がこんなところでも、と思うことがあった。先日、行きつけの美容院に行ったところ、置かれていた雑誌が一掃され、座席ごとのタブレット端末に変わっていた。店が定額制の雑誌読み放題サービスに加入していて、利用者は施術中の暇つぶしに、好きな雑誌を選んで読める。衛生管理も安心だし、好みと違う雑誌を渡されてがっかりすることもない。便利だ。

 不況といわれていた出版業界は、電子出版が急成長し活況を呈している。全国出版協会・出版科学研究所が発行する「出版指標年報」によると、紙とデジタルを合算した2020年の出版市場は1兆6168億円で前年比4.8%増。紙の減少を前年比約3割増のデジタルが補った。牽引(けんいん)しているのは電子出版の売り上げの9割近くを占める電子コミックだ。

コミックの市場規模は 統計開始以来最大に

 コミックの販売金額は、19年にデジタルが紙を逆転。20年には、紙の2706億円に対し、電子コミックが3420億円と圧倒した。ただ、同年は紙の単行本のコミックも売り上げを伸ばしており、紙と電子を合計したコミックの市場規模は、統計開始以来最大の6千億円を超える市場規模となった。ピークだった1995年をも上回ったのだという。

 背景としては、コロナ禍の巣ごもり需要に「鬼滅の刃」という爆発的なヒット作があったことがあるが、それだけではない。電子書籍ストアは定着。漫画アプリが伸びたり、紙とデジタルをセット販売したり、と、売り方も多様になっている。ネットフリックスなどの動画配信サービスとの相乗効果で、息長く売れる作品も増えてきた。

 私も今では8割以上を電子書籍で購入する。いくつもの端末で読めるし、保管の心配もいらない。あの小説の書き出しは何だったか、と思ったら、過去に購入した本を検索すればいつでもどこでも見られる。仕事では特に便利だ。

 では、紙の本はいらないのか。

 前述の年報をみると、文庫本

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